出発の日の朝、寝過ごした。 気分良く起きて時計を見たら、起床予定時間を1時間過ぎていることに気がついた。 予定していた電車まで30分しかない。 大変だ大変だと大騒ぎしていたら、信じられないことにあっという間に準備が整い、荷物を引っ張りながら駅まで走り、ホームで発車寸前の電車に飛び乗った。 自分でも信じられないが間に合ってしまった。
成田空港は混んでいたが、裏技的にビジネスクラスカウンターからチェックインして、これまた裏技的に自動出国手続きカウンターを通過し、夏のハイシーズンを迎えた空港の手続きを「待ち時間ゼロ」で通過することができた。 朝寝過ごしはしたが、ここまでの首尾は上々であった。 しかしこのときはこの日に我々を待ち受けるトラブルを知る由もなかった。
機体整備が遅れていて、搭乗時間が5分遅れますというアナウンス。嫌な予感が的中して30分経っても搭乗手続きが始まらない。 1時間が過ぎてついに「搭乗手続きは今から更に1時間後になります、レストトランでお食事をどうぞ、費用はクラスに合わせてANAが負担いたします」とのアナウンス。 数が少ないレストランは混雑すると考えて即行動して昼食をとり、1時間後に戻ってみると、搭乗口付近で同じ便に乗ると見られるグループが集まっていた。 女性ツアーコンダクタが「パリからニースへ移動する予定でしたが、飛行機遅れによりニース行きの飛行機への乗り継ぎが間に合いません、今夜はパリに宿泊します、ご心配なく宿泊と夕食など費用はすべてANAが負担します。 その後の予定は変更になりますがご安心ください」なんて悲壮な感じで説明している。
結局2時間以上遅れて、パリ行きの飛行機はやっと離陸した。 朝、必死で駅まで荷物転がしながら走ったのに! ゆっくり寝ていれば良かったと思ったが、シャルル・ドゴール空港でのトランジットは3時間近くあるので何の心配もしていなかった。
ドゴール空港のターミナル1に2時間遅れで到着、ピサへ向かうエアーフランスの便は2Gターミナルなので「お隣のターミナルね」と軽く考えていた。 時間は50分もあるので楽勝だ。 着陸のときは、向かいに座るCAのお姉さんとイタリア観光の話で盛り上がり、乗り継ぎまで時間があり過ぎたのでこのくらい遅れるくらいがちょうどいいなあ、本場のフランスパンは何故かとても美味しいので空港で買って食べようかな、なんて余裕の会話をしていたのであった。
飛行機を降りるとANAの係員がいた。 彼女は乗り継ぎできなかった連中への説明で大忙しであったが、念のため「Pisa行きのAir France便に乗り継ぎますが、ターミナルは2Gでいいですよね?」と聞くと、手元のリストを確認したその女性は我々の名前を聞いてから、「あなたたちの便は乗り継ぎに間に合わないので、荷物をピックアップして今夜はトランジットホテルで宿泊してください。 ホテルと明日の便はANAで手配します」と予想外のことを言われた。 冗談じゃない、Pisa行きの離陸までまだ50分もあるのに勝手に決めるな、我々は予定どおり乗り継ぎますよ、と言ったところ彼女はトランシーバーでセンター?に確認したが、「50分では乗り継ぎに間に合わない、すでにこの便は手続きがクローズされている」と驚くべきことを平然と言った。
どうして50分もあるのにクローズするのだ、納得いかない、ターミナル2Gへ今から行く、と食い下がったら彼女は再びセンターへ連絡し、「お客様のご自由に、でも荷物は間に合いません」と言ったぞ。 更に「乗り継ぎに間に合わなかった場合は、お手数ですがまたこちらのANAカウンターまで戻ってきていただき宿泊の手続きをお願いします」なんて言ったぞ。 このやりとりで既に5分をロスしたのだが、このときはまったく彼女が間に合わないと説明している意味が理解できなかったのだった。
ターミナル1からターミナル2へと移動開始、無人の長いエスカレーターを進むとターミナル2への連絡バス待合所が現れた。そうか、ターミナル2へはバスで移動するのか、と思っていたらバスが到着、でもなかなか発車しない。 なんとなく不安になってきた。 向かうターミナルは2Gなのだが、Gというのが気になりだした。 そしてその不安は的中するのであった。
やっと発車したバスは広大な空港を走り、ターミナル2には着いたがなんと2A、2B、2Cと順に停車してゆくのだ。 2Fで我々以外全員が降りたので運転手に確認すると「2Gはここで降りろ」と言う。降りて階段を上がるとそこにはパスポートコントロールゲートがあった。 2Gはこのパスポートコントロールを通過するのかしないのか?表示はないぞと迷っていたら、ちょうど添乗員の説明が終了したばかりの日本人グループが一斉に列に並んだ。その直後に2Gはここを通れの小さな表示を発見、ここまでに時間を相当使ってしまい、残りは20分しかない。添乗員が「皆さん、英語でも日本語でも何も答えないように、答えるといろいろ聞かれます、まったくわからないふりをして通過してください」などと指示しているぞ。
このグループの後に並んだのではとても間に合わないと思い、誰も並んでいない「EU居住者専用窓口」に向かい、係りのお姉さんに「時間がないのでここから通してほしい」とお願いしたら、搭乗券は持っているのかと聞かれた。 エアーフランスはスターアライアンスグループではないので成田では発券できない、つまり持っていない。 持っていないけれどこのままでは乗り遅れるのでなんとかチケットだけで通してくれと頼むが駄目とのこと、逆方向にあるトランジットカウンターで発券してから戻って来いなんて言っているぞ。
この時点で何となくANA係員が言っていた「乗り継ぎは間に合わない」の意味がわかってきた。 でもいまさら引き返せない我々は、トランジットカウンターに向かってついに走り出した。 まったく国際線の乗り継ぎで空港の中を走るのはいったい何度目だろうと考えるとおかしくなってきたのだが。
トランジットカウンターに着くが、でっかいおっさんがカウンターの中のお姉さんとなんだか揉めているぞ。 お姉さんの隣にいたカウンターのおっさんに「ボーディングパスがほしい、時間がないので急いで!」とチケットを振りかざすが「おれは関係ないもんね、ただの整備員だもんね、あのお姉さんに聞いてくれ」って言われた。
でっかいおっさんは何か盛り上がっておりまったく終わる気配がない。 でもこのような場合待つしかないことはわかっている。 いらいらしながら待っていると、奇跡的におっさんは突然お姉さんと和解して会話を終了した。 お姉さんに発券を頼むと、チケットを見ながら「あなたたち、今から成田に行くの?」などと聞いてくる。おいおい、時間がないと言っているでしょう!Pisa行きがもうすぐ離陸するのだよ!ともう叫んでしまう。 やっとお姉さんは納得し端末を操作してから「あら、もう手続きはクローズしており発券できない」という。そこを何とかしてほしい、絶対に本日中にPisaへいかなければならない、絶対、絶対と粘る。 お姉さんはどこかに電話をしてくれて時計を見ながらため息、そしてボーディングパスを発券してくれたのだった。
すでに離陸までの時間は10分となっていた。 また走って戻る。 パスポートコントロールには先ほど並んでいた日本人グループは誰もいない。 係りのお姉さんに「時間がないので急いで」と叫ぶと、スタンプポンで、「Run,Run,Run」と言われた。 コントロールを抜けてまた走る。 2Gはどこだ! でも搭乗券があるのでもう大丈夫だろうと少し安心していた。
エスカレータを駆け上り、長い通路を走る。 2E、2Fを通過すると変な方向に2Gの表示があるのを発見。表示のとおり進むと何と建物の外に出てしまった。 信じられないことにまたまたバスに乗れという表示を見て愕然とする。 もう時間がない、間に合わない、(空港の内部なのに?)タクシーはいないかなと絶望的な気分になって呆然と立ち尽くしていたら、なんと奇跡的に連絡バスが来た。 このバスは即発車して少し離れた小さな建物に着いた。 これがシャルルドゴール空港の一番端にぽつんと離れて建っているターミナル2Gであった。
建物に入ると、Pisa行きの表示板はFinalCallの表示。既に離陸予定時間は過ぎているが間に合った気がする。 でもゲートがわからない、搭乗券にも書かれていない。 係員を捕まえて確認するとまずセキュリティゲートを通過してからゲート確認しろと言われる。 このゲートではまずペットボトルの水を一気飲み、ベルトを外して通過、PCか大きなカメラはバッグに入っているかと聞かれたが、「PCはない、カメラは小さなものだけ」と説明した。ところがバッグがチェックにひっかっかた。 大きなカメラがあるじゃないか、と文句を言われたので、この一眼レフは小さいカメラだろうと応酬したら、この国では一眼レフは大きなカメラって言うんだ、わかったか!手間をとらせやがって、と逆に怒られたぞ。
2度目のチェックで、最初は問題なく通過した金属探知機が反応し、全身をチェックされる。 時間ばかりが過ぎてしまい何度ももうダメだと天を仰ぐ。 なんやかんやでセキュリティチェックを通過し、最後のダッシュで猛然と通路を走りながら、横目で確認したゲートに向かう。 やっとゲートに到着した、まだ閉まっていないぞ。 ところが搭乗券を読み取り機が認識しない、ここまできてなんてこった。 君たちはベネチア行きの予定をピサ行きに変更していないか!などといろいろ質問されるが、いいかげんにしてくれ、ここに搭乗券があるだろう!とこちらもお怒りモード、結局チケットのコピーを渡し、手荷物預けの番号を控えて手動で手続きを済ませ、やっと搭乗することができた。
飛行機は小さなジェットで、離陸時間を遅らせた我々はみなさんの冷たい視線を浴びながらやっと席に座り、流れる汗を拭くのであった。
Pisaの空港は小さいけれど可愛らしい落ち着いた雰囲気のある空港だった。 小さなターンテーブルに荷物が出てきて各自ピックアップして、あっと言う間にターンテーブルはストップした。 予想通り、我々の荷物は出てこなかった。バゲージクレームにロストバッゲージを登録していたら、Overnight Kitという紙袋をもらった。 タクシーでホテルへと向かいチェックイン。 OverNight Kitの中身は、Tシャツやシャンプ-、櫛などで、何となく役立つものが入っていた。準備がいいということは、この空港へ向かう便ではロストバゲージが頻繁にあるのかなと思った。
朝寝過ごして駅まで走り、シャルル・ドゴール空港では次々に迫る障害を順にクリアしながら、端から端まで走り抜けた一日であった。 空港の中の景色は全く記憶に無い、美味しいフランスパンなんて吹っ飛んでしまった。 長い一日であった。
・・・・・・・・ to be continued

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