★ サンチアゴ・デ・コンポステーラ ★


 シル渓谷入り口のおばさんの家に別れを告げ、国道に出てからまずガソリンを入れた。 この車は大型車なのでタンクが大きくてなかなかガソリンが減らないのだが、ポルトからここまで一度も給油することなく走ってきたのには驚いた。 ディーゼルを満タンにして安心から再び走り出した。 車は次々と村を通過しながら快調に走る。

途中で見つけたスーパーマーケットで買い物したり、地元の人で賑わうレストランで食事したり、高速道路に乗ったり降りたりしながらのんびりと走る。 そうしているうちに、ガラガラだった道路には車が徐々に増えてきて、周囲の車の運転が目に見えて荒くなってきた。 サンチアゴ市内に入ったのだ。

 旧市街は古い石畳の狭い道路が特徴で、その狭い道は一方通行が多くて複雑、そして路上駐車の車がびっしりと連なっている。 南から市内に入った我々は、このややこしい迷路のような市街地に突入してしまった。 大聖堂は目立つので目印になっていいのだが、道が複雑でなかなか大聖堂前の広場へ辿り着けないのだ。 前回初めてこの街にきたときも、大聖堂の周りを何度もグルグルと回ったことを思い出した。

気合を入れて直して中心部を目指す。 ところが、苦労して大聖堂のすぐ近くまで来たのであと少しと思ったら、また離れてしまう。 一歩通行を逆から進入して怒ら、バス専用レーンを走ってバスの運転手に怒られ、最後には警察署で道を聞いたりしながら、やっとの思いで大聖堂前の広場に辿り着いた。 この広場に面するパラドールがこの旅の最後のホテルなのだ。

パラドールはスペイン国営ホテルで、ポルトガルのポザーダと同じように国が威信をかけて運営している高級宿泊施設だ。 五つ星のパラドールはスペイン全土でもレオンとここの2箇所しかない、つまりこのホテルはスペイン最高のホテルという訳だ。 天蓋つきのベッドがある落ち着いた部屋に案内された、窓からは大聖堂が見える。 このホテルは昔の王立病院という歴史的な建物を使っており、調度品などは昔のままとのこと。 建物、中庭、廊下、それぞれが落ち着いた作りで、その全てが時を越えてなお素晴らしい雰囲気を醸し出している。


 今回我々が旅の最終目的地に選んだのは、巡礼の道の最終地点でもあるこのサンチアゴ・デ・コンポステーラだった。 長い長い道を歩いてこの街に辿り着く巡礼者は、街を望む岡の上からこの大聖堂を見て涙するという。 威厳溢れる堂々とした大聖堂は、以前見た記憶と寸分違わぬ姿で広場を見下ろしていた。 広い広場には徒歩による長い長い旅を終えた人々が、疲れきってはいるがとても満足そうな表情で目の前の巨大な大聖堂を見上げている。大の字に寝転がっている人たちも大勢いる。

大聖堂の中はすごい数の人で大混雑だった。 ただ、大聖堂入り口の聖ヤコブ像には囲いがあって信者が触れられないようになっていた。 以前はこの像の前には直接触れたい信者の長い列ができており、像には信者の手の跡がくっきりとついていたのを思い出した。 巡礼を終えた人がこの囲いを見て、像に手を触れることができないことを知ったらさぞ悲しがるだろうと思った。

近くの公園から大聖堂を眺めたり、石畳の道をのんびりと歩いたりしながら、この巡礼の終着点の古い街を楽しむ。 巡礼の達成を喜ぶ人たちで、街全体が幸せに溢れているような感じがする。


 夕食は、大聖堂近くの定食を出すレストランに行った。 前菜とメインをそれぞれメニューから選ぶ形式で料金はリーズナブル。 席に座るとパンと水がどんと置かれた、シンプルなテーブルと椅子が狭い間隔で配置されて数名のウェイトレスとボーイが滅茶苦茶忙しそうに動き回っている。 さすがにワインメニューは充実している。 地元の赤ワインを1本オーダーした。 食事を終える頃には外もやっと暗くなりはじめてきた。 支払いを済ませて店を出るときには、入り口に長い列が出来ていた。 この店は地元でも人気の店だったのだ。

夜になると大聖堂はライトアップされて、広場は昼間とはまた違う顔を見せる。 広場にはまだ大勢の人がいるが、空気はひんやりとして肌寒い。 パラドールの豪華な部屋で昔の修道院の生活を思いながら眠りについた。


 翌朝起きるて空を見るとどんよりと曇っていた。 さて本日はAVIS営業所へ車を返却に行かなければならない。 駐車場から車を出して駅のAVISオフィスへと向かう。 駅は歩いていける距離なのですぐに着けると思っていたがこれが甘かった、またまた道に迷ったのだ。 本当にこの街は運転が難しい、駅周辺まで来てもなかなか駅に辿り着けない、駅は高くなった道路の下のほうにあり道路から直接見えないこと、車で駅に行くためには駐車場にまず入らなければならないのだがこの駐車場入り口が小さくてわかりにくいことが原因だった。

駅の周りをぐるぐる回って、歩いている人に道を聞いて、また聞いて、やっと見つけたAVIS事務所は駅の有料駐車場の中にあった、おいおい最初から言って欲しかったな。 AVIS事務所のおじさんは簡単なチェックで「OK、問題なし」って言ったぞ。 ギマランイスでのパンクとポルトのオヤジの対応を思い出して怒りがこみ上げて来たが、目の前のおじさんに文句言ってもしかたないと思い我慢した。 いつも思うのだが返却はとっても簡単。


 レンタカーを返却してどっと疲れが出たのか、ホテルに戻ったら眠くなって天蓋付きベッドで心地よく眠ってしまい、何と気がつけば夕方だった。 夕方といっても夏のスペインではまだ日は高く、夜になっても明るい街を気の向くまま散策し、今回の旅の最終日を堪能したのであった。
 
夕食はガリシア地方自慢の海鮮料理にしようということで、おいしそうなレストランを探す。 ガリシア風タコ、イカのリング天ぷら、生あさり、そして楽しみにしていたペルセベスを注文した。 タコは前回この街で食べたものがとてもおいしくて印象に残り、日本のスペイン料理店でも何度か注文したことがあるが、どうも身が硬くておいしくない。

今夜のタコは身が柔らかくて美味しい、まさに記憶の味と同じだったので大満足。 イカリングも柔らかくてすごくおいしい。 日本ではなかなか食べられない生のあさりにはレモンをたっぷりと絞り、身をくねらせるあさりを生で食べるだだが、滅茶苦茶おいしい。 そしてペルセベス、亀の手という名前のこの貝はグロテスクな形をしているが磯の香りがしてとても美味である。 ガリシア地方の白ワインと自家製のサングリアが料理の味を更に引き立たせるのだ。

久しぶりに食べた生アサリとペルセベスは、この旅の最終日を飾るにふさわしく、誇り高いガリシア地方の味がした。


・・・ The End


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