セゴビアからのバスはマドリッドのバスターミナルに到着した。ここからは地下鉄で予約してあるこの旅行では最高級のホテルに向かう。 どうして四つ星ホテルに地下鉄で行くのかといえば、タクシーではあっという間に着いてつまらないからである。 最短距離の地下鉄路線が何故か運休で、地下鉄を乗り継ぎずいぶん遠回りをしてやっとホテルに辿り着いた。 最近マドリッドは治安が悪く、危険だらけと聞いていたので最新の注意をもって行動したのではあるが、地下鉄の階段が上がったり下がったりで乗り換えも大変、荷物をガラガラ引きながら移動する我々を地元のみんなが興味深そうに見ているのがわかる。
ホテルでひと休みしてから再び地下鉄に乗り込み街へと出かけた。 セゴビアに比べてマドリッドは相当暑い。 歩くだけでもうへろへろだ。 プエルタデルソルあたりはものすごい人だ。 10年前と変わらないこの熱気を再び感じるとともに、昔の初めての一人旅で最初に着いたこの街の広場に再び立っている自分に少し感傷的な気分になった。
マドリッドはちょうど月曜日で美術館が休館で残念だった。 ぜひプラド美術館へゆきたかったのだが仕方がない。 ピカソの「ゲルニカ」が移設されてきている「国立ソフィア王妃アートセンター」が月曜も夜9時まで開館しているらしいので行ってみる。 この美術館はアトーチャー駅の近くにあって古い建物の正面にシースルーエレベータをついたおもしろい外観となっている。 入り口では空港にあるような装置で入場者の荷物チェックをしている。 そのとき前回ゲルニカを見たときのことを思い出した。 プラド美術館でじっくりとベラスケスやゴヤを見た後、確か坂道を少し上ったところにある別の建物に行ってゲルニカを見た記憶がある。閉館間際だったこともあり閑散としていた館内で見たこの絵画はすごい迫力だった。 分厚い防弾ガラスの越しであったけれども、中央少し左に描かれる馬の叫び声が聞こえるような気がしたことを昨日のように思い出した。 この大きな絵の前で時間の経つのも忘れてに呆然と一人佇む私であったが、係員の「閉館です」という催促にせかされるようにしてこの絵を後にしたのであった。 美術館の荷物チェックを見て思わず防弾ガラス入りのゲルニカを思い出したのであった。
カメラをクロークに預けて入場料の500ペセタを支払い展示室に向かう。 2階と4階がメインの展示会場となっており時間の関係で2階のピカソ、ミロ、ダリを重点的に鑑賞することにした。 パンフレットには「ゲルニカはガラスプロテクトなしで見ることが出来る」と書いてあるではないか! 本当かとうれしくなる。
ゲルニカとの再開は感動的であった。 前回は防弾ガラスに蛍光灯が反射して見にくかったのが今回は障害物もなく、それも近い距離からじっくりと見ることが出来た。 ゲルニカとの再会はとても嬉しい出来事であった。
治安の良くない街マドリッドの夜を遊ぶのは避けて早々とホテルに戻る。
翌日はゆっくりと起床、朝食はホテルの中庭でおしゃれなレストラン。 しかしセゴビアの仔豚料理以降胸がもたれている私はフルーツ程度しか食べられない。 仔豚の祟りなのか、帰国してからもしばらくは胃の調子が悪かったのだ。
早めにホテルをチェッククアウトしてタクシーで空港に向かう。 イベリア航空のカウンターへ行ったらここではないと言われる。 そこで「そうだこの便はSPANAIRで運行されるのだった」と思い出しSPANAIRカウンターでチェックインした。 免税店でワインなど買い込み便を待つが、この便はSPANAIR機材であるが、SASとLHが共同運行になっている。 おもしろいものだと思いハッと気がついた。 そうだ我々の便はLHになっていなかったか? 航空券を確認すると確かにLHになっている。 本来であればルフトでチェックインすべきところをSPANAIRに直接チェックインしてしまったことになる。 だからフランクフルトでの乗り継ぎ便の搭乗券は発券できないと言われたのか・・・ まったく二人揃ってぼけたものだ、だいたいこの共同運行のシステムはややこしくて困る。 SPANAIRのおねえさんも、ここは違うとか言ってくれれば良いものをそのまま発券するからこうなってしまうのだ。でもまあいいっか。 というか思考回路がすっかりスペイン的になってしまったようだった。
この便がまたまた遅れてしまう。 今回の旅行では飛行機の遅れが多い。
最初は30分遅れとアナウンスがあった。 30分後に皆が並び始めるが全然搭乗開始の気配がない。 空港内の出発便一覧スクリーンの案内は30分遅れの表示だけでその時刻を過ぎても変化しない。 搭乗ゲートの案内は1時間以上過ぎてからやっと「Delayが表示されるだけ」 さすがに辛抱強いスペイン人もいらいらしてきて係員に詰め寄るが、そのたびに「もう少し待て」と言われている感じ。 我々はもう飛行機は遅れるものと最初から決め込んで椅子に座ったまま好きなことをして過ごしていたが、突然搭乗開始のアナウンスがあった。 結局2時間以上遅れて飛行機は離陸したのであった。
しかし、フランクフルトでの乗り継ぎ時間が4時間もある我々にはこの遅れの影響はまったくなく、昨年のミュンヘンでの経験がここでも生かされた結果となった。
フランクフルト空港は日本人ばかりで、おばさん達の大声が通路に響いていた。 その声に、もうここはほとんど日本だと感じたのであった。 さすがにANAは当然のようにオンタイムで離陸してゆく。 乗る飛行機がことごとく遅れた今回の旅のなかでは奇跡的にも思える正確さであった。
でも、日本人社会からしばらく離れていると、空港の待合室やロビーで周りの人たちがうるさくて迷惑顔なのにまったく気にせず平気でで大声で話したり笑ったりする行為や、飛行機の座席で平気でシェイバーを使う日本人の行為がとても奇妙に見える。
・・・・・・・・ to be continued

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