フィゲラスを予定より早く出発し、西へと車を走らせる。 途中の町ベザル(Besalu)を通過し、Thomas Cookのガイドブックで写真を見て印象的だった村、ロカ (Castellfollit de la Roca)へと向かった。 ガイドブックの写真は「ピレネー地方」の紹介の部分にあって、山に囲まれた断崖の上に張り付くように複数の細長い建物が乗っているもの。 見た瞬間に、「ここへ行こう」と思ったのだった。
地図によると車はロカの村に入っているが、それらしき景色が見えない。よくある田舎の小さな村で昼過ぎの時間帯はシェスタのお時間で人影もない。 あっと言う間に村を通り過ぎてしまった。 おかしいな、引き返そうかな、違う村かな、と思いながらしばらく坂道を下る道を行くと、突然右側に写真で見た風景が出現した。
右手に見えているのは、今走り抜けてきた村だったのだ。 村を走っているときには右手にずーと建物があり、その向こうの断崖絶壁は見えなかったのだ。 村を抜けて右に曲がりながら坂を下ってきてやっと断崖絶壁の下から村全体が見えたということに気が付いた。 つまり写真で見たのは「ロカの町から見上げる風景ではなくて」、「断崖の上にあるロカの町そのものを見上げた風景」だったのだ。
ロカの村、下から見上げる景色は素晴らしい。 車が時々通るだけ、誰もいない道路から見えるこの絶景を独占で楽しんだ。 何度も言うが、何と言う景色なんだろう! 自然の偉大さを感じざるを得ない。
ロカの風景を目に焼き付けてから、オロット (Olot)を通過し、目的地のアバデサス (Sant Joan les Abadesses)へ到着した。 ロマネスク時代の美しい橋が残るというこの村が本日の宿泊候補だが、時間はまだ日が高い16時だった。 車を停めて少し歩いてみたが店は閉まっており、歩いている人もほとんどいない。 死んだような町だなあと感じながらインフォメーションボードでホテルの場所を確認すると、この村にはホテルはないことが判明。 2軒のペンションらしきものがあるだけだ。 ペンションの外観を比較してみて感じの良いほうのペンションに行ってみた。 部屋は空いているとのことで即決定。 清潔な部屋で料金も安い。
このペンションの二階はレストランになっていて、夕食の時間が夜の9時-10時で料金は10ユーロというのを聞いてから部屋で休憩のお昼寝タイム。 お昼寝で気力回復したが、まだこの国の夕食には時間が早いので夜の村を散策することにした。 夜の7時だというのにまだ明るい村を散策すると、驚いたことに昼間閉まっていた店が開いており、かなりの数の人がそぞろ歩きしていったりして、観光客も相当数みかけるのだ。 昼間は死んだような村だったが、この時間は活気に溢れている。
9時にペンションのレストランへ行ってみたら、なんと続々と客が来るではないか。 複数のメニューから第一の皿、第二の皿、デザート、飲み物などを順番に選ぶシステムになっていて、ワインをオーダーしたところリオハ(RIOJA)の赤ワインが1本どんとテーブルに置かれた。 料理は味もボリュームも申し分なくて、料金から見ても十分満足できる内容だった。 このレストランは、たぶんこの村一番のレストランではなかったのだろうかと思っている。 第一の皿は もちろん生ハムメロン をチョイスした。
その後もカタルーニャのピレネー地方を中心にあちこち回ったけれども、このペンションの夕食のコストパフォーマンスを超えるレストランには出会えなかった。
この小さな村はとても静かで、美しい中世の橋はいまでも人や自転車が渡ることができる。 この橋は、夕方と朝ではまったくその雰囲気が違う、光線の変化によりその姿を微妙に変えるのである。 朝と夜は活気があり、午後は全体が眠ってしまうピレネー山脈のふもとの小さな村、大都会バルセロナから観光都市フィゲラスを経てここアバデサスに辿り着き、やっとのんびりした旅行気分に浸ることができたのであった。
・・・・・・・・ to be continued

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