★ ラ・ロック・カジャック La Roque-Gageac ★


 農家民宿の朝、どんぶりコーヒーの奇妙な朝食を済ませるともう日が高くなっていた。 快晴だ! 今日は今回の旅のハイライトの一つでもある「ボートツアー」に行く日なのだからこの天気はうれしい。 ボートツアーはドルドーニュ川を遊覧するもので、対岸に点在する美しいシャトー(城)を川から順番に眺めることができてその景色が絶景というものだった。 16:30のツアーを事前予約していたのであるが、ボートの乗り場を午前中に確認しておこくとにした。

ボート乗り場は、これまたフランスで一番美しい村のひとつ「ラ・ロック・カジャック」という村にあるらしい。 着いてみると、この村は背後を切り立った崖にお覆われており「まさに絵になる」村だった。 青い空に雲が浮かぶ空をバックにした、崖と川に挟まれたこの小さな村は本当に美しい。 しばらくこの美しい村を眺めてからボート乗り場を探す。 

乗り場はすぐに見つかった、川沿いの駐車場の横にあるインフォメーションオフィスの建物がボート乗り場だったのだ。 その建物の前では、おばさんがホースから水を出して何かを洗っている不思議な光景に出会った。どう見ても普通は洗わないような家具のようなものを洗っているのだ。 何をやっているのかなと思って聞いてみたら、先週から雨が降り続いて川が増水しついに昨日には水が堤防を越えてしまい、このインフォメーションセンターの建物も浸水してしまった、今日は水が引いたので被害にあったものを洗っているところだという。

そんなに水位が上がったの?と聞くと、「もう大変で、川から溢れた水が建物にまで入ってきてくるぶしの高さまで浸水した、広場も駐車場も水浸しになったのよ」「商売道具も水浸しになったので、こうして順番に洗っているのよ」と説明してくれた。 今日はボートツアーやっていますよねと聞くと、「やっているわけないでしょう、朝から全部中止だわよ、この川の水位を見てごらんなさい! こんなに増水しているでしょう!」って言うではないか。 と言われても、普段の水位を知らない我々であった。


ガーーービーン!!! なんだなんだ中止か! こんなにいい天気なのに!! 残念、残念、とっても残念! せっかく日本からボートツアーの予約までしてとても楽しみにしていたのに! とわいわい騒いでいると、このおばさんがホースの水は出しっぱなしのまま、店に入っていったと思ったらたくさんのパンフレットと地図を持ってきたぞ、周辺のお勧め観光スポットを順番に説明しだしたぞ、おいおいこのおばさんは何者だ?

このおばさんは、ツーリストインフォメーションのおばさんだったのだ。 近くの城から始まって、次々に地図にチェックを入れながら説明は延々と続く。 ホースの水はその説明の間出しっぱなしで、気になって仕方がなかったがついにストップすることはなかった。 説明は30分くらい続いただろうか、一区切りついた瞬間を捕らえて説明を強制終了させていただき、丁重にお礼を言ってからパンフレットと地図をかかえて車に戻る。 


 楽しみにしていたボートツアーが中止と聞いてがっかりしたが、おばさんのお勧めに従い周辺の名所を順番に回ることにしよう。 洞窟ツアーも中止でボートツアーも中止とはまったくついていないとはこのことだ。 まずは少し走ってから橋を渡ったところにあるカステルノー城へと向かう、なかなか格好いいお城だな。
 
入り口のチケット売り場のお姉さんが「ここのチケット買うと別々に買うよりお得ですよ」と言うので、緑の「もこもこ」したものが写っている奇妙な場所の入場券も同時に購入した、Marqueyssacという場所らしい。 この「緑のもこもこの場所」は、ロカマドールの農家直営のフォアグラショップのおばさんが、たまたまたそこのパンフレットを持っていた我々に「ここは素晴らしいわよ!ぜひ行くべきだわ!」と言っていた場所ではないか。 でもこの場所はガイドブックには載っていなかったのだ、なぁんだこの城の中にあったのか、ラッキーと喜んだのだった。


 カステルノー城は外から見ると格好が良いのだが、中はお子様受け狙いでいまいちだった。 平日ということもあり小学生の社会見学がたくさんきていてうるさいのなんのって。 城の中には階段があって中は中世の戦闘道具や鎧や甲冑など博物館のように膨大な物量が展示してあった。 日本の城の中と同じだなぁとがっかり。 城の見学は適当に切り上げて、「緑のもこもこ」の場所を探すが見つからない。 いろいろと調べた結果、その場所は城の中ではなくて、少し道を戻った川の対岸にあることがわかった。 どうしてここでチケット売っているのだろう?  
 
 「緑のもこもこの場所」は何と公園だった、マルクイサック公園というらしい。 そして入場券にもパンフレットにも写真があった「緑のもこもこしたもの」の正体は植木だったのだ。 広い公園の植木がきれいに刈り込んであってそれがまた独特の形になっているというわけだった。 なんだよ、ややこしい写真を載せるなって!!! 要するに四国の栗林公園のミニチュアという訳かい! この公園では素晴らしい孔雀を見たのでまあよしとしよう。


 さて次はペイナック城なので期待できるかな! 断崖絶壁の上にあるこの城はガイドブックには必ず登場するほど有名な場所なのだ。。 川の横の駐車場に車を停めると崖の上に立派な城が見えた。 気合を入れて急な坂道を登る。 ものすごい坂道が続くが気合を入れ直してどんどん登る。 城に着く頃には膝ががくがくになってしまった。

やっとの思いで城に到着した。 道の突き当りには門があった。 しかし、おいおい、城の門が閉まっていて入れないぞ。 時間は17時半、うーん閉館時間になったのかもしれない。 せっかく坂道をここまで登ってきたのに・・・ 残念。

門の前で休憩だ、同じようにここまでたどり着いた観光客はみんながっかりとして引き返している。 でもここから見る景色は素晴らしい。 対岸には少し前まで我々がいた中世戦闘道具博物館のカステルノー城が見える。 カステルノー城とこのベイナック城は、その昔敵と味方に分かれて壮絶な戦争をしたというが、なるほどここまで互いの城が近いとそのような歴史になるのだなと妙に納得してしまう。

城壁の横で休息しながらカステルノー城を眺めて、昔の戦いの歴史などに想いを馳せていると、すっかり夕方になってしまった。 疲れもとれたところで、またまた急な坂道をどんどん降りて川の横の駐車場に戻った。 さて、宿に戻ることにしよう。 


 まだ夕食の時間には少し早いので、宿の近くにある高台の村ドンム(Domme)に寄ることにした。 この村から見るドルドーニュ川の眺めが素晴らしいと聞いていたので行ってみたかったのだ。 海外ではとてもお利口で優秀な我々のカーナビであるが、このドンム村へはなかなか行けなかった。 村は高台にありどの方角からでも到着できるような場所なのであったが、カーナビは逆に迷ってしまったようだ。 指示通りの進むととんでもなく狭い道へ誘導される、何度か再検索を繰り返したがついにあきらめてカーナビの指示は無視して道路標識を頼りに村へ向かう。
 
ずいぶん遠回りをしたがやっと村に到着、門をくぐると石畳の細い道で困ったぞと立ち往生、村のおじさんがこの道を行けという仕草で教えてくれた。 指示されたその道を行くと駐車場があった。 駐車場のとなりがラ・バール展望台で、ここが絶景スポットだった、ラッキー、ありがとう村のおじさん。

ドンム村からの夕暮れのドルドーニュ川の絶景を楽しんでいたら、夕食の時間が近づいてきた。 夕食に遅れることは絶対にできないのだから、村を散策したかったが教会を少し見ただけであきらめて宿に向かう。 結局、ラ・ロック・カジャックのインフォメーションの親切なおばさんが勧めてくれた名所の半分も行けなかったが、まあいつのもことだから仕方ないか。 のんびりゆったりの旅行だからね。


 宿に戻ると夕食の時間だ。 今夜のゲストは我々を含み四組。 アーウイおばさん夫婦と我々が連泊、新しくお友達夫婦が二組登場、お目目パチクリ夫婦は南へ移動してしまい確か今日はピレネーに登るっていっていたな。 食前酒は、くるみのお酒で美味しい。 最初にたまご/パン/ガーリックのスープ 、お約束のフォアグラの次のメインは白アスパラとカモのソーセージでとて美味しい。 デザートはびしょ濡れプリンで手づくり感がでていて美味しい。 アーウイおばさんのご主人は英語は駄目だがワインをがぶ飲みしており、どういう訳か私にばかり注いでくれる。 デザートになってもまだワインを注いで飲んでいる。 結局私がそのワインに付き合う羽目に、それも二日連続で・・・・

今日はどこに行ったの?という話になり、ボートツアーは中止で城と村めぐりと言うと「サラ(Salat)には行っていないのか!」と宿のおばさんとご主人が言うので、行っていないし行く予定もないというと、サラには絶対に行かないとダメダメ、あんなに美しい町なのにと力説する。 アーウイ夫婦も絶対に行くべきだと主張する。 余計なお世話だ思ったが、それは知りませんでした明日行ってみます、と答えておいた。 前夜と同じく皆さんのお話は延々と続いたが、新顔2カップルの片方がついにお話から離脱して部屋に戻ると言ったタイミングで夕食は終了、前日とは違い10:30に解散となった。 

 農家民宿二日目の朝食、パンもジャムもおいしい。 蜂蜜は濃厚で甘すぎるかな。 どんぶりコーヒーもロンパールームも二日目だと慣れるなぁ。 手づくりヨーグルトとメロンジャムを一緒に食べる、これは特に美味しくて幸せを感じてしまう。

みんなが出て行ってしまい最後に残った我々は、おじさんとおばさんにご挨拶してチェックアウト。 ここでもまたサラへ絶対に行けといわれる。 今から行きますときっぱり約束してしまう。 サラは確かに世界遺産で美しい町なんだろうとは思う。 でも結構大きな町で、小さな田舎の村をめぐる我々のプランには合わないということで早い段階から訪問地から外してたのだ。

宿のコメントノートに何か書けというので日本語で感想を書いた。 翻訳しろとおばさんに命令され英語でその内容を伝える。 おばさんはそれをフランス語でおじさんに伝えて、おじさんはうれしそうな顔になった。 というようなことで、みんなが幸せ気分でお別れ。 おばさん曰く、我々はこの宿にとって二組目の日本人だったということらいしい。

この宿は、農家が自分達の家を使って民宿のようにするというフランス独特のスタイルの宿だったのだ。 イタリアのアグリツーリスモと同じようなシステムで、フランスの場合はハーフボードで夕食を宿のご主人と一緒にゲストが食べるシステムが普通だとのこと。 値段が安くてその地方の料理が楽しめるというので地元の人達には人気だそうだ。 

この宿も、ホームページの書き込みでは結構評判がいいらしい。 評判を読んで予約したのでしょう!って言われたけれど、フランス語だけのホームページなので書き込みが読めないんだって! 苦労してこの地域の宿泊箇所リストを探し出して、施設が少なくて規模が小さくて価格が安い場所を選んで予約しただけだ。 場所は良くわからなかったのだが、予約していからGoogle Mapで探すが住所からは良くわからない。 最後の手段ということでGoogleのストリートビューで周辺をしらみつぶしで探した結果、畑の奥の狭い道のまた奥にそれらしき一軒屋を発見して、道の小さな標識からそこしかないと判断してその場所をカーナビに記憶させておいたのであった。




・・・・・・・・ to be continued


農家民宿 サン・シル・ラポピー



フランス南西地方 に戻る



ご意見は hiro_homepage@ab.auone-net.jp まで

Copyright (C) "HIRO" 1997-2012