すっかり雨が上がった道を南に向かって走る。 相変わらずカーナビは幹線道路ではなくて細い田舎の道へと我々を誘う。 ずいぶん長い時間延々と田舎の道を走っただろうか、のんびりした田舎の道路には車もほとんど走っていない。 フランス田舎はどこもこんな感じなんだろうななどと考えながら、のんびりと、そうのんびりと車を走らせるのだった。
曇り空はどんどん雲行きが怪しくなってきて、ついに雨が降ってきた。 参ったなと思いながら車を走らせていると、はるか先の丘の上に小さな村のようなものが見えてきた。 なんだかイタリアのトスカーナの風景に似ているな、きっとあれが目指すコルド・シュル・シエルに違いない。 ここでもカーナビの案内は見事なもので、コルド・シュル・シエルの隣の小さな村のB&Bのちょうどその前で、「目的地に到着しました」というアナウンスを得意げに告げたのだった。
B&Bの玄関からご主人と奥様が出てきたぞ、どうも我々を待っていたようだ。 途中、あまりにのんびりとしていたので少し到着が遅れたから心配していたのだろう。 なんだかとっても愛想がいい二人だな、などと思いながら中に入ってみるとこのB&Bはなかなか素敵なお家だった。
ご主人も奥様も英語を話すのでなんだかほっとする。 この2日間は農家に泊まっていたので、ずーと早口のフランス語ばかり聞いていてさすがに疲れてしまったのだ。 近くに良いレストランがあると聞いたが、遅いランチを食べたのでお腹がすかない。 夕食は近所の店で何か買って軽く済ますことにした。 毎晩フォアグラと鴨のコンフィという食事は体に良くないからちょうどいいな。
朝起きると、前日の雨が信じられないような快晴。 遅い朝食はドイツ人カップルと一緒だった。 二人から、コルド・シュル・シエルは素晴らしいところだったという話と、ちょっと遠いけれどコンクという村が良いので絶対に行くべきだという話を聞いた。 彼らは今日移動して、更に南下してからピレネーの山に向かうと言っていた。 外国語で一番大事ことは「どれだけ相手とコミュニケーションがとれるか」だというような話で盛り上がりながら、シンプルだけれども美味しい朝食を楽しんだ。 ドイツ人カップルが出発すると我々が最後となった。 奥様と旦那さまに挨拶してから記念写真を撮っていただき、この素敵なB&Bを後にした。 B&B近くの駐車場に車を停めたまま、てくてくと歩いてコルド・シュル・シエルへと続くなだらかな坂道を登る。
なだらかな坂道を歩き村に到着したが、なんだかものすごい数の人がいるぞ。メイン広場周辺は人また人でカフェも満席だ、なんなんだこれは、まだ昼前だというのに! よく見てみると、広場周辺で「朝市」が開かれていたのだった。
広場の横の道路を占拠するような形で、道路の両側には多くの露店が出ており、野菜、フォアグラ、肉などの食べ物から服、装飾品、意味不明のものなどなんでも売っている。 どうみても地元の人達が大勢来ており、買い物客で道路が埋まり歩けないほどの大盛況なのだ。 今日は土曜日だったということに気が付いた。
しばらくこのすさまじく活気のある朝市を冷やかしてから、丘の上の方角に見える城を目指してかなり急な坂道を登り始めた。 曲がりくねった坂道の両側には古い建物が立ち並び落ち着いた雰囲気だ。 坂道を歩いていると、朝市の喧騒が嘘のようだ。 人も少なくてとっても静かなのだ。
中世のまま時間が止まったような風景の中、坂道ををどんどん登ると門があり、この門からさらに進むとそこがコルド・シュル・シエルの頂上だった。 頂上にもまた広場があり、広場の横には教会があった。 広場に隣接してカフェが並んでおり、観光客らしき連中がくつろいでいた。 このカフェの横の城壁からは素晴らしい景色を楽しむこととができた。
しばらくこの景色を見ながら休憩して、今度は坂道を下り朝市の広場に戻ってきた。 驚いたことに、なんと、あの朝市はなくなっていたのだ。 文字通り、影も形もなくなっていたのだ。 所狭しと並んでいた露店はどこにいったのだろうか? 露店を眺めていたあの大勢の人はもう帰ったのか? 朝市があった場所は普通の道路になっていて、満席だった広場のカフェは閉店してしまっていた。
さらに驚いたことには、広場に面した建物にあったインフォメーションオフィスも閉まっており、あちこちにあったみやげ物屋もほとんどが閉まっていた。 この閑散とした村の広場の、土曜日の昼下がりの、なんとも不思議な光景を眺めながら駐車場へと戻ったのであった。
・・・・・・・・ to be continued

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