★ カルカソンヌ-2 Carcassonne-2 ★



 朝のカルカソンヌは快晴だった。 前夜のスーパームーンの幻想的な景色を思い出すが、ホテルの部屋から見えるシテは夜とは全く違う表情で堂々としたものだ。 ゆっくりと朝食を取りホテルをチェックアウト、車をホテルの地下駐車場に残したまま古い橋 (Pont Vieux) を渡りシテへと歩いて向かう。

前日は寂しかったシテへと続く道には、不思議なことに朝から観光客が大勢歩いているではないか。 そして、城壁の入り口は大勢の観光客で賑わっていた、前日の夕方にもここに来たが人影がまったくなくてとても寂しい雰囲気だった。 この人混みを見るとまるで違う場所のようだ、今日は日曜日なのだが前日との差があまりに大きくてどうも解せない。

このシテ (site) は周囲を高い城壁に囲まれた要塞だった。 城壁に沿って深い堀があり、見るからに要塞っぽい。 このシテと呼ばれる城壁に囲まれた場所が世界遺産に認定されているのだが、どこから見ても絵に描いたような「難攻不落の要塞」なのだ。


 入場料を払って城壁の大きな門(ナルボンヌ門)から中へ入る。 門の正面にはユニークな顔の大きな彫刻があった。 偉大なるカルカス像だ! このカルカソンヌの街の名前の起源となったと言われている伝説に出てくる女領主がカルカス(Carcas)なのだ。
→ 伝説は写真の解説を参照

このナルボンヌ門に入るエントランス部分は跳ね橋になっていて、敵の侵入を食い止めることができる。 跳ね橋を過ぎると、驚いたことに城壁が二重になっていることに気がつく。 二つの城壁の間は何もない広い空間、つまり広場で、この二重城壁を破って侵入することは極めて難しいことがわかる。 なんと、この城壁の間をゆっくりと走る観光用の馬車まで準備されていたのにはさらに驚いた。

内側の城壁を通りシテへと入ると、そこはもうメイン通りだった。 メイン通りの緩やかな登り坂の両側にはみやげもの屋がずらりと並んでいる。 快晴の青空ではあったが、この細い道は完全に日陰となっておりとても肌寒い。

しかし、中世の姿をそのままに残しているという城壁の中には、確かに古い石畳の道や重厚な造りの建物など迫力ある建造物があるのだが、この土産物屋と滅茶苦茶多い観光客はなんなんだ! 中世の雰囲気ぶち壊しではないか!


 完全に観光地と化した世界遺産のシテではあるが、この観光客の多さに唖然としながらも仕方なくぶらぶら歩く。 しかしどこに行っても観光客がいるぞ、まったく落ち着かないな。 さすがにモン・サン・ミッシェルに続くフランス第二の観光都市だけのことはあるな。

ぶらぶらしてシテの奥までやってきたら、そこには小さな城壁に囲まれた城があった。二重城壁の内部にまた城壁だ。 なんと、ここに入るのにはまた入場料が必要のようだ。 仕方なく入場券を買って中に入る。ここがコンタル城 (Château Comtal) だった。

城壁に囲まれたシテの中に、また城壁に囲まれた小さな城がある。 日本の城の「本丸」のようなものだなと感じた。 このコンタル城は12世紀の建物らしいが、保存状態が良くて昔の姿をそのまま残している。 コンタル城の中は博物館になっていてそれなりに面白い。

コンタル城の見学を終えて、また城壁の中をぶらぶらする。 うーん、どこへ行っても観光客だらけ状態は相変わらずだ。 レストランが集中する広場に来たのだが、すべての店で店の中も広場のテラス席も満席状態、すごい。 入場料を含み一日にいったいどのくらいのお金がこの城壁の中に落とされるのか、などと考えてしまう。 ここは、一種のテーマパークなのだと思った。


 さて、城壁の中をぐるぐる歩いていると出発点のメイン通りに戻ってきたぞ。 シテのぶらぶらも終わりで外に出ようかなと思ったが、ここで妙な階段を発見した。最初にこのメイン通りに入った時には背面に位置しており見えなかった階段だが、逆から歩くとこれが気になる。 この階段の上には入口があり観光客らしき連中が出てきた。 もちろん、好奇心旺盛な我々はこの階段を上る。

階段の上の入り口には係のおじさんが仁王立ちしており、だめだめここからは入れないぞ! と我々を追い返そうとする。 入りたいと粘ると有料だという。 では払うというとここではなく別の場所で払えとの答え。 どこで払えばいいのだと迫ると、おじさんはその場所を説明するが、やりとりは全部フランス語プラス身振り手振りのため要領を得ない。

地図を挟んでやりとりし、やっとの思いで入場券を買う場所を聞き出したところ、どこかで見たような場所のような気がした。 ひらめいて、コンタル城の入場券を見せたところおじさんの顔が一変し満面の笑みに。 なんだ、君たち、早くそれを出せばいいのに、って感じで恭しく通してくれたのであった。 こっちが言いたいよな!最初からコンタル城の入場券持っているかとこちらに聞けばよかったのだ! と飽きれながらもやっと中に入ることができた。

建物の中は博物館だった、なんだコンタル城と同じかとがっかりしていたところ、なんだかおもしろそうな扉を発見した。 なんとこの扉の向こうは城壁の上だった。 そう、ここから内側の城壁の上の通路に出ることができるのだった。 そういえば、城壁の中をぶらぶらしているときに、ときどき城壁の上を歩いている人を見かけた。 どこから登るのだろうかと思っていたのだが、探しても登る場所がわからなかったので諦めていたのだった。

この城壁の上の道は、とても狭いのだけれど歩いている人が少なく快適だった。 ここからは城壁の内側の観光客でごった返す景色と、外側の美しいカルカソンヌの下町の景色の両方が見えて気分が良い。 この通路は城壁の半周程度続いていたので、いろいろな景色を楽しむことができた。 そして、この道の終点が、なんと驚いたことにコンタル城の裏側だったのだ。

さっきコンタル城を見学したときには、この城壁の上に続く階段には気が付かなかったのだ。 無理もない、中庭の隅に小さな扉があってそこから小さな階段が城壁の上まで続いていたのだ。 入場券にもコンタル城の案内にもそんなことは書かれていなかったぞ!

なるほど、コンタル城の見学をしてから、ここの中庭から城壁へと登り、城壁の上を歩いて反対側のメイン通の上まで行って、我々が上ったあの階段からメイン通りに出るというのが通常のコースらしい。 あのおじさんは、何も知らなくて入場券を持たない観光客が階段を登って逆流してコンタル城にタダで入るのを防ぐための仁王立ちしていたということか。 と、まさに今逆流してきた我々としては、やっと状況を理解したのだった。


少し前に別れを告げたコンタル城の中庭に出てきて妙な気分ではあったが、この城壁の上の道は人が少なくて景色が良かったことから、結果的には大満足だった。 まだまだ観光客がうじゃうじゃの同じ道を歩いて、またまたメイン通りに戻り、今度こそこの中世の要塞都市シテから外世界へと出て行ったのであった。


 駐車場へ戻る途中、前夜の撮影ポイントであった新しい橋 (Pont Neuf) からシテの全景を再び眺めてみた。 昼間の姿もまた格別だな、ここはやはり撮影ポイントだと思うのだけれど、なぜか前夜もこのときも観光客が全くいない。 シテの中のあの観光客たちはここを知らないのかもしれないな、もったいないなどと考えてしまった。


・・・・・・・・ to be continued


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