ロカマドール滞在で楽しみにしていたのはもちろんこの村の絶景であったのだが、もう一つとても楽しみにしていたところがあった。 パディラック鍾乳洞(Gouffre de Padirac)という地面に開いた大きな穴から地下鍾乳洞へと降りていく洞窟ツアーだ。
ロカマドールで宿泊したホテルのオーナーから、「大雨の影響でツアーは中止している」と到着した日に聞いて心配していたのだ、予約は翌日の午後だったから。 翌日の朝にオーナーから、「残念ながら今日もツアーは中止になった、いつ再開するかまったくわからない」と聞いてがっくり。 さて、どうしたものかと途方にくれる我々だったが、この親切なオーナーは近くの美しい村と城を巡る観光コースを教えてくれたのだった。
オーナーのお兄さんのご推薦コースは、近くの村と城を順番に巡るというものだったが、場所が多すぎて地図を見ているるだけで目が回りそうになった。 そこで我々は勝手に、まず最初に「ルブレサック(Loubressac)」、次に「オートワール(Autoire)」という美しい村を訪ねて、次に「モンタル城(Château de Montal)」、そして「カステルノー ブルトゥヌ城(Château de Castelnau-Bretenoux)」という美しい城に行くという、「周辺の村と城巡り厳選セレクトコース」に変更してしまった。
いつも活動は午後からというのんびりしたペースで動く我々には、オーナーの案は最初から無理な計画であることは明らかで、半分くらいの場所に行ければいいかなぁという感じで選んだのがこの厳選セレクトコースだった。 のんびりと移動して、どうしても行きたい場所や食べたい料理があればまた来ればいい、というのが基本的な考え方なのでマイペースを崩さないのだ。
最初に向かったのは、ルブレサック(Loubressac)という小さな村だ。 フランスには「最も美しい村 (Les plus beaux villages de France)」とうものがあり、協会から認定されると「うちの村はこの国で最も美しい村に認定されたのだよ」と宣言することができて、村の入り口に「認定書代わりの標識」を設置することができるのだ。
-協会が定めた最も美しい村の認定基準は以下。
1. 人口が2000人を超えないこと
2. 最低2つの遺産・遺跡があり土地利用計画で保護のための政策が行われていること
3. コミューン議会で同意が得られていること
しかし、「最も美しい村」というのは違和感があるなぁ。 「最も美しい村のひとつ」と言わないとまずいような気がするのは私だけだろうか? 日本にもこの認定制度を模した「日本で最も美しい村」認定があるのだそうだ、知名度は如何なものかと思われるが。
駐車場に車を停めてから歩いて村に入った、すぐに美しい村認定標識が見つかった。 なかなか洒落たデザインだ、さすがはフランスだと妙なところに感心してしまう。 村をぶらぶらと探索するが、観光客の姿はほとんど見あたらない。 空は快晴で澄んだ空気の中村に吹く風が心地よい。
土産物屋もインフォメーションセンターもなくて住民が普通に生活している。 丘の上のこの小さな村にはセンスの良い建物が並び、村外れから見る景色は遥か彼方の地平線と空に浮かぶ白い雲のバランスが素晴らしい。 この雄大な景色はイタリアのトスカーナに似ているような気がするが、こちらの景色がより女性的な感じがする。 静かで落ち着いた雰囲気が漂うこの村を散策していると、なんともいえない平和な気分になる。 なるほど、確かにそういう意味でもこの村は美しい村なんだなあと実感した。
さて、この美しい村ルブレサックに別れを告げて次の村に向かうことにする。 途中でパディラック鍾乳洞(Gouffre de Padirac)近くを通ることから、ちょっと寄ってみた。 ひょっとしたら急に水が引いたりしていて入れるかもしれないぞ。 到着してみると、広い洞窟の駐車場には車がほとんどいない。 やはり営業していないのかと思ったが、諦めの悪い我々なので入り口のある建物まで行ってみた。
建物の中切符売り場の横の入り口には、係りのお兄さんとお姉さんが仁王立ちしていたぞ。 しらん顔して、今日は休みですかね?と聞いてみたら、「先週の連日の大雨の影響で洞窟内の水位が上がり、ツアーは当面中止となっている」との説明だった。 日本からわざわざ来たのに!Internetで今日の午後のツアーを予約して既に料金も支払っているのに!どーしてくれるのだ! と訴えたら、「料金は払い戻ししてくれると思うよ、でも担当が違うからこのアドレスにメールして問い合わせてね」などと言いながらメールアドレスが書いてある用紙を手渡された。
仕方なく、何故かここだけ不自然にオープンしている建物内の土産物屋を冷やかしてから建物のすぐ横にある「大きな穴がぽっかりとあいている場所」を覗き込む。 うーんこれが洞窟の入り口の穴に違いない。 地下へと続く鉄筋のリフトらしくものと長い階段が見えるが底は暗くて良く見えない。 水位が上がっているって、どこのことだ? 底には道が見えるけど水は見えないぞ! 水位上昇は洞窟の内部の話なんだろうな、と想像してみる。 オープンしていればこの中へ入っていけたのだと思うと、すごくすごく残念で悔しい。 外は快晴でこんなにいい天気なのに・・・・・
さて、洞窟に未練を残しながらではあったが、村と城のツアーに戻ることにしよう。
次に向かったのは、オートワール(Autoire)という村だ。 この村も最も美しい村に認定されているらしいので楽しみだ。 幹線道路(といっても田舎道なのだが)の標識に従い脇道に入る。 しばらく走ると村への道を示す標識とその下には例の美しい村認定の標識を発見。 断崖絶壁の横を走る道の湧き水の場所で少し休んだりしながら、車は谷の底へと続く坂道を下る。 オートワールは谷の底の村だった。
この村は、断崖絶壁に囲まれた谷の底というロケーションで、丘の上の村ルブレサックとはまったく異なる雰囲気を醸し出している。 村の入り口の駐車場に車を停めると、ここにも大統領選挙のポスターがあった。 ロカマドールのポスターより存在感がなくて候補の写真も目立たないのがおもしろい。良く見るとサルコジさんの顔の上は別の張り紙がしてあり、オランドさんの写真は2枚張ってある。 これではサルコジさんがかわいそうだ。
ここオートワールもまたルブレサックと同じく静かで落ち着いた村だった。 広場、教会、そして一体感のある色調で統一された家々。 ぶらぶらと歩くだけでのんびりした気分にさせてくれる。 協会が認定する最も美しい村は、認定後も定期的に審査があり認定基準を満たさない場合は認定が取り消されることから、新しいビルなどの建設はできないという事情がある。 村の近代化は遅れるが歴史と伝統は守られるということだろうか。
さて、オーナーが紹介してくれた美しい村はまだまだあったのだが、のんびりやさんの我々としては村はこれくらいにして、次に美しい城を見に行くことにしよう。 まず最初の城であるモンタル城(Château de Montal)を目指す。 幹線道路から脇道に入るとすぐの森の中にその城はあった。 16世紀に建てられたフランスで最初のルネッサンス様式の城は、フランスらしく概観がとてもエレガントで美しい城だった。 中はどうなっているのだろうと期待が大きくなってくる
この城には美しい庭園があり、良く手入れされた庭園は城と完全に調和しており絶妙のハーモニーを生み出している。 見る方向によってその姿が変わるのが面白くて、あちこちから城を眺めその変化を存分に楽しんでから中に入ろうとしたが、なんと入り口が閉まっているではないか。 なんだなんだ、今日は休館日だったのか、残念、駐車場に車がほとんどいないので変だなとは思っていたのだがまさかお休みとはね。
まあ城の中はだいたいどこも同じで当時の鎧兜や武器が展示してあるだけで、面白くないことが多い。 城はその姿が素晴らしいのだと思っているので、このモンタル城の優雅な姿を十分堪能できたことで満足と言っておこう。 モンタル城の内部見学は諦めて次の城に向かうことにした。
次に向かったのは、カステルノー ブルトゥヌ城(Château de Castelnau-Bretenoux)という城だ。 この城は城壁に囲まれた丘の上にあり、この地方で採れる茶褐色のレンガを使い16世紀-17世紀に建てられた。 村の有力者の居住地として、そして堅固な要塞として機能していたとのこと。 有料の駐車場に車を停めてから坂道を城に向かって歩く。 城壁が邪魔で城の全景が見えないが、なかなか立派な姿だ。
城壁に沿って歩くと入り口があった。 しかし、門が閉まっているではないか! 案内掲示板を詳しく見ると、何と、「1/1, 5/1, 11/11と12/25はお休みします」と書いてあった。 本日は5/1だった! そうかメーデーか、フランスにもメーデーがあるということに驚いたが、あって当然かもしれないなと思い直す。
道理で駐車場に車がほとんどいないと思った、さっきのモンタル城もメーデーで休館していたのだと納得。 しかしこの重厚な城は中に入りたかった、周囲が城壁に囲まれていてその全景が見られないのでストレスが溜まってしまったのだった。 といってもどうしようもないので、城壁越しでバランスよく見える場所を発見し、その城の姿を目に焼き付けてからこの城に別れを告げた。
これで本日の見学プラン、「周辺の村と城巡り厳選セレクトコース」は終了となった。 二つの城の内部見学ができなかったこともあり、まだ時間的には十分余裕があったのでオーナーが紹介してくれた別の村や城に行くことも考えたが、結局無理はせずに宿に戻ってからロカマドールの村を散策することにした。
-別ページのロカマドール散策記事参照-
・・・・・・・・ to be continued

フランス南西地方 に戻る
ご意見は hiro_homepage@ab.auone-net.jp まで
Copyright (C) "HIRO" 1997-2012
|