タルン渓谷の二日目も快晴。 朝食を済ませてからゆっくりとチェックアウトする。 宿の主人夫婦にご挨拶。
11名のグループが出発した直後だったが、お二人とも彼らに対し相当お怒りの様子で、「昨夜も遅くまで騒いでいた」「自己中心で礼儀知らずの連中」「二度と来てほしくない」などと我々に文句たらたら。
普段は、良く知っているグループ以外の団体は予約を受け付けないのだが、ちょっと油断して今回は予約受け入れたらこの始末。 部屋のシャワーを壊したり、非常識な要求ばかりいってきたり、夜遅くまで騒ぐうるさい連中だった。 その上、食事マナーは下品でどうしようもなく最低な奴らだった、二度と泊まらせないぞ、とぼやくことぼやくこと。
あなたたちのように上品なゲストだと本当にいいのだけどね、などとまだぼやいているご夫婦にご挨拶してから出発だ。 まあ、文句言っているのは奥さまの方で、ご主人は相変わらず「今日はいい天気だよ、まさに洞窟観光にはうってつけだ」なんてこの日も言いながら笑っていた。
前日にタルン渓谷のドライブは済ませたので、この日は別の渓谷をドライブしよう。 前日とは進路を逆にとり南へと向かう。 途中、川が分岐する村で小さな川に沿って進路を東へと変えると、そこはにまた違った渓谷の風景だった。
この渓谷はタルン渓谷より規模は小さいがそれでも十分見ごたえがある。 景色を楽しみながらガラガラの道をしばらく走ってから、途中からは急な坂道を登りこの渓谷を離脱、崖の上へと向かう。
崖の上に来てみると、そこは広大な平原だった。
360度地平線が見える平原を走る、断崖絶壁に囲まれたすり鉢の底をさっきまで走っていたのが信じられない。 しばらく走ると、目指す アヴァン・アルマン (Aven Armand)鍾乳洞の標識を発見した。
標識に案内されるまま一本道を走ると、それらしき場所に到着。 この鍾乳洞は崖の上の広い広い高原のど真ん中にあった。 鍾乳洞というと山の中というイメージだったのでとても驚いた。
受付で手続きしてから、小さなケーブルカーで鍾乳洞の入り口に向かって草原の下を潜ってゆく。 ケーブルカーを降りたところにある小さなドアを開けると、そこにはものすごく広い地下の空間が目の前に広がっていてびっくり。 なんと、ここは地下の広いひとつの部屋なのだった。
このドアは大きな鍾乳洞の側面にあり、鍾乳洞の中心部分までは階段で底まで降りる。 グループには専用ガイドがいて、この広い空間の見学コースを順番に案内してゆく。 例によってフランス語オンリーなので、我々はガイドの説明は無視して勝手にあちこち見て回る。
真っ暗な鍾乳洞の中には無数の円柱が立っている、この不思議な空間をガイドがリモコンで照明を操作しながら説明するのだった。 それにしても、この鍾乳洞の大きさはすごい、草原の下に広がる大きな大きな鍾乳洞、自然の驚異を感じずにはいられない。
天井からしたたる水滴が、気の遠くなるような長い年月をかけて円柱に育つ、暗闇に浮かび上がるこの円柱の景色は驚異的だった。 ガイドが突然ライトを消すと洞窟は真っ暗になった。 でも、目が慣れると、はるか上に小さな明かりが見える。 これは、天井に空いた「たったひとつの穴」で、つまり地上の草原とここでつながっているとのことだった。
階段を下ったり上ったりしながらツアーは続いたが、1時間程度で終了。 ケーブルカーで地上に戻る。 受付横の売店で絵葉書を見たりりしていたら、「閉めるので出てくれ」といわれた。 受付のお姉さんとケーブルカー運転手のお兄さんは、我々を追い出すと事務所を閉めてしまい、仲良く隣のカフェのベンチでランチタイムだ。
洞窟から我々と一緒に出てきた連中も、草むらに座りでのんびりとランチ。 ちょうど車で到着した連中も、「おいおい、しばらくは事務所が閉まっているので洞窟に入れないぞ」と心配する我々を尻目に、怒る様子もなく草むらでやはりのんびりとランチ。 もちろん、我々も草むらでランチとしゃれ込んだ。
さて、ランチを済ませてからこの高原に別れを告げ、高原からまたまた川へと下り渓谷の道を戻る。 宿の近くまで戻ってきてから。前日は時間がなくあきらめた「タルン渓谷を見渡す絶景ポイント」へと向かうことにした。
Point Sublimeという場所は、前日走り抜けた渓谷の川沿いの道の遥か上にある断崖から突き出た場所だった。 ここから見る渓谷はまさに絶景であった。
これほど広大な空間を感じる渓谷は、ノルウェイのナーロイ渓谷を見たとき以来だなぁなどと思いながらこの絶景に見とれるのだった。 しばらくここでぼぉっとしていたら、なんと、コンドルが現れて悠々と空を飛んでいる姿を見ることができた。
こんなに素晴らしい景色なのに、観光客はまばらで小さな売店が一軒あるだけ。 茶色に変色して丸まってしまった絵葉書が売られていた。 うーん、フランスの田舎恐るべし!
Point Sublimeからはもう渓谷には戻らず、そのまま高原をドライブだ。 なんだかイタリアのトスカーナ地方に似ている美しい風景だなぁ。 今日は朝から渓谷の底、洞窟がある高原をドライブし、地下洞窟探索、そしてまた渓谷に戻ってから、タルン渓谷を見下ろす絶景を堪能、そしてトスカーナのような景色をドライブ、とても密度の濃い一日だなぁと思い返すのであった。
・・・・・・・・ to be continued

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