★ コンク Conques ★


 美しい村に別れを告げ、車は本日の目的地で旅行の後半のハイライトになるはずの村 コンクに向かうのだった。

1年前にこの地方を旅したときに、とある宿で一緒になったドイツ人カップルから 「コンクはすごくいいところだから絶対に行くべきだよ」と聞いていたので、今回の旅行ではとても楽しみにしていたのだった。

山の中の道をずいぶんと走っただろうか、くねくねと曲がる道を上っていると突然コンクの村が現れた。 入口には駐車場があって一般車は村に侵入できない感じだ。

我々の宿は多分村の中に宿があるのだぞ、カーナビは中に入れと言っているぞ。 もちろん、駐車場の係員の隙をついて、車を村へと続く道に乗り入れた。

坂道を上ってゆくと正面に高い塔が見えてきた。 塔の前まで来ると道路には人がいっぱいいて騒がしい。 ところがカーナビはこの騒がしい地点で「目的地に到着しました」などと言い出すのだった。

参ったな、ここでは車は停められないじゃぁないか、とぶつぶつ言いながら無理やり車を道路脇に停めて地図など取り出して現在位置の確認を始めた。


突然、目の前のレストランから若いお兄さんが飛び出てきて、「ようこそコンクへ、荷物を置いてから駐車場へ案内します」と言ったぞ。 どーして我々があんたの宿の客だとわかったのかな?

確かにこのレストランの上が我々の宿だったのだ。 言われたとおりに、荷物を降ろしてからお兄さんを助手席に乗せて駐車場へ向かう。 一方通行の道をそのまま上り、村の上のほうの道を通って村の入り口まで一旦戻り、また村へと入り直してとても狭い道を通り宿の駐車場へ到着。

宿で一休みしてから、村をぶらぶらする。 多くの観光客と巡礼者が入り混じって修道院の周辺に集まっていた。 しばらく村をぶらぶらするうちに人がどんどん少なくなってきたぞ。 日帰り観光客が多いのかもしれないなと思った。

夕食は宿のレストラン、この地方の料理ということで予約しておいたのだが、鴨入りのサラダとアリゴ (Aligot)というマッシュポテトにこの地方のチーズをまぜた料理。 両方ともとてもおいしい。

このアリゴという料理を見た瞬間、どこかで見たような気がした。 食べようと思いフォークでとると、なんとべろんと伸びるではないか! そうだ、昼に立ち寄ったスーパーマーケットの通路のワゴンの中に多量に積まれて売られていたのがこれだったことを思い出した。

思いがけず、このアリゴという料理を食べることができて満足した。 やはり、旅行ではその土地の名物料理を食べるのが一番おいしいといつも思う。


 コンクの朝、空気が良くて観光客もいなくて気分が良い。 朝食を終えてからわかりにくい場所にあったインフォメーションセンターに行くと、とても親切な係員のお兄さんがいろいろ説明してくれた。

そして、なんと日本語の地図とガイドブックをくれたのだった。 今回の旅行ではToulouseで見かけたきり、その後日本人はまったく見ていないのだが、こんな準備があるということは日本人も案外来ているのかもしれないと思った。

地図によると、村を一望できる丘まで歩いて30分ほどというのでインフォメーションセンターのお兄さんに確認してみた。 彼は、歩いてすぐの場所で一本道なので迷わない、素晴らしい景色なのでお勧めという。

天気もいいので行くことにした。 修道院横の道から城壁の外に出てから、細い坂道を川に向かって下りてゆく。 小さな川を渡ってからは急な上り坂となる。 地図だとこんなに下ったり上ったりはわからなかった、案外タフなハイキングになってしまった。

やっと丘の上に着いた。 その丘から見るコンクの景色は・・・
絶景だった!

そこはコンクの村が一望できる場所、緑の中に村が見える。 サント・フォア修道院の高い塔がひときわ目立つ素晴らしい景色。 一時間以上そこにいただろうか、二組ほどの観光客が車でやってきて写真を撮って即帰って行った。 誰も歩いては来ない。

この景色を堪能し、写真も撮って満足したので、来た道を引き返して村まで戻る。 しかし30分とはまた言ってくれたものだ、片道1時間はかかったぞ。 少し疲れたので、宿にもどってお昼寝だ。


 お昼寝で元気が回復したので、サント・フォア修道院のタンパンをじっくりと見てみた。インフォメーションセンターでは日本語の説明資料をくれたので、実物を目の前にしてそれを見るととてもわかりやすい。 向かって左に天国が、右に地獄が描かれているのだが、なかなか迫力がある。

真ん中にはキリストがいて、守護聖人のフォアもいる。 おもしろいのは、枠外に「観察者」というのがいることだ。 よく見ると、あちこちにいるのであるが、その表情がユニークでおかしい。 村の土産物屋にはこの表情をモチーフにしたお土産がたくさん置いてあった。

このサント・フォア修道院には面白い話が残っている。 アジャンという村で12才の若さで殉教したフォアは聖人となり、その聖遺物がアジャンの教会に安置されていたが、これをコンクの修道士が盗んでコンクに持ち帰ってしまった。 その聖遺物を安置したのがサント・フォア修道院なのである。

そんなものを盗むというのもずいぶんだと思うが、修道士は10年もアジャンの教会で働きながらチャンスをうかがっていたというから執念深いものだ。 それ以降コンクではいろいろな奇跡が起きたことから巡礼者を集めて発展してきたという歴史も面白い。


地図に示された、「景色が良い場所」を順番にめぐることにした。 サント・フォア修道院周辺以外は観光客も少なくて、静かな石畳の道をのんびりと散策が出来た。

この村は中世の街並みがそのまま残っており、時間が止まっているような感じなのだ。 とても落ちついた雰囲気の中をぶらぶらと歩くだけで、とてもリラックスできる。

夕方まで、村をぶらぶら、足の向くままにまたぶらぶら。 宿は修道院のすぐ横にあるので、疲れたら部屋に戻って休憩することができるのは安心だった。

夕食は前日と同じく宿のレストランで。 パスタの上に白身魚、ソースは酸味が利いたクリーム味でパスタとの相性が絶妙だった。 この料理もこの地方の料理だと、到着時に店から出てきたお兄さんが説明してくれた。

夕食を済ませても外はまだ明るい。 また村をぶらぶらする、やっと夕闇が迫ってきた修道院はライトアップされて、タンパンの前には地元の人たちが集まって説法を聞いていた。

夜になって観光客がいなくなったコンクは、店も閉まり、巡礼者も眠りについて、静かな静かな村となった。

明日の天気はどうかなと思いながら、夜のそぞろ歩きを楽しむ。 知らない村をぶらぶら歩くのは本当に楽しい。


 コンク三日目の朝、朝の日差しで目が覚めた。 空は抜けるように青い。

宿をチェックアウトして車に荷物を積み込んでから、村の上を走る道路脇からの景色を楽しむ。 この角度からの景色がまた素晴らしい。

森の中の村、緑の中に埋もれるような感じが絵葉書のようでもあり、おとぎ話の世界のようでもある。

この感じは言葉では表現できない。 ずーと見ていても飽きない、ずーと、ずーと、本当にずーと見ていたかった。


・・・・・・・・ to be continued


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