ディングル半島に別れを告げ、内陸部へと向かう。 ドライブは快調そのもので、交通量の少ない主要道路を走って目的地のアデアへと到着した。
アデアは「アイルランドでもっともかわいらしい村コンテストで優勝したことがある」というガイドブックの記事に惹かれて立ち寄った村、この日の宿泊地であるBIRRへの途中にあるのでドライブの休憩も兼ねて立ち寄る計画であった。
駐車場にすんなりと車を停めたときには、この村で遭遇することになる「今回の旅行での最大のトラブル」が待っているとは予想すら出来なかったのであるが・・・
幹線道路沿い、100メートル程度の区間に特徴ある、昔の様式の建物が並んでいた。 カフェ、レストラン、みやげ物屋になっているそれらの建物がこの村の「売り」であり、可愛い村コンテスト優勝したポイントとのことであった。 しかし、この区間の建物だけが目立ちその他は普通の村と同じ。 コンテスト優勝は30年前という話なので仕方ないかとも思ったが、少し期待していただけにこの風景は残念だった。
しかし、この村には観光バスで次々と観光客が押し寄せており村中が観光客で溢れている状態。 何とかしないと過去の栄光だけでは観光客もそのうち来なくなるとではと心配してしまう。
インフォメーションセンターで軽い昼食を済ませ通りを一人で歩いているときに、その悲劇は突然やってきた。
何の前触れもなく、突然右目に鋭い痛みが走った。 激痛にその場から一歩も動けない。 激痛と同時に右目から涙が多量に溢れ出してくる。 目に異物が飛び込んだと直感的に判断し、道路に立ち止まった状態でハンカチで目をぬぐって異物を除去しようと試みた。 しかし激痛と涙は激しさを増すばかりで一向に止まらない。
しばらくその状態のままでいたが、このままではどうしようもないと考え、激痛と観光客の奇妙な視線に耐えながらインフォメーションセンターのトイレの洗面所へと移動して、水道の水で何度も目を洗った。
洗っても洗っても激痛は治まらないが少しは気分が落ち着いてきた。 車と洗面所を行ったりきたりして目を洗ったり乾かしたりしたが2時間近く経っても回復しないので、ついに諦めて近くの薬局で買った目薬で痛みをごまかしながら運転を再開し、BIRRへ向かうことにした。
右目の視力がほとんどない状態で、つまり左目だけで運転を続けてやっとの思いで宿泊予定地BIRRへ到着したのであった。
この町ではレストランが有名なゲストハウスを屋予約していたので、チェックインして即レストランを予約。
それからホテルの部屋のシャワーで本格的な異物除去作業に入ったのだが、信じられないことにいくら目を洗っても痛みが取れないのだ! この頃には「異物はこの国の虫で、私の目の洗浄作業に執拗に抵抗して、まだ目の中に残っているため、異物感と痛みが継続しているのだ」と信じるに至っていた。 このままでは失明してしまうと思い現地の医者に視てもらうしかないと判断、楽しみにしていたレストランもキャンセルして、夜の8時頃に近くの医者に行った。
状況の説明が大変で、POORな英語を駆使して必死で説明する。 ところがドクターは、私の目に光を当てながら拡大鏡でじっくりと見た後で一言、「何も残っていない」と言い放ったのである。
私は、「それは違う、異物感がありまだ猛烈に痛いので何かあるはずだ」と猛然と抗議した。 ドクターは、余裕の態度で「多分目を強くこすっただろう、その時に目に傷がついている、傷が異物感と痛みを残しているだけで実際には目の中に何もない」と説明した。
それでも、納得できない私。 ドクターは、ではこの目薬で痛みがなくなる、と言いながら何やら目薬を注してくれた。 その直後、信じられないことに、魔法のように痛みが消えてしまったのだ。
ドクターに何度もお礼を言って、ホテルに戻った。 レストランの豪華ディナーは食べ損ねたが、その夜は安心してぐっすりと眠れた。 一瞬先は何が起こるか本当に分からないと実感した長い外国での午後であった。
翌朝は、異物感と痛みは残っていたが前日ほどではなくて安心した。 すっかりお馴染みとなったボリュームたっぷりのアイリッシュブレックファストを平らげた後、BIRR城を見学しようと思ったが私有地で入場料が高額だったこと、ダブリンまでの移動を考えると見学に十分な時間がとれないことから諦めた、実はこの城の中に昔の巨大な望遠鏡があると聞いて楽しみにしていたのでとても残念であった。 結局、町の小さなバザールを冷やかしただけで、BIRRを出発した。
・・・・・・・・ to be continued

アイルランドに戻る
ご意見は hiro_homepage@ab.auone-net.jp まで
Copyright (C) "HIRO" 1997-2004
|