San Giovanni d'Assoの古城ホテルで目覚める。 今日はオルチア渓谷のドライブなのでとても楽しみ。 テレビで見た美しい景色はどこにあるのだろうか、ずいぶん時間をかけて美しい風景を事前に探し、どうしても見たい景色を3ヵ所に決めて場所を事前に特定していた。
景色1 : 平原に数本の糸杉が固まって立っている風景
景色2 : 平原に小さな家と一直線の糸杉がある風景
景色3 : 糸杉の道がスウィングしながら丘へ上ってゆく風景
これら景色は、テレビの風景を頼りにしてGoogleEarthにアップされている写真から探し出したり、インターネット上で出会った旅行記の作者に直接メールして場所を聞いたり、考えられるあらゆる手段を駆使してなんとか場所を特定することができたと信じていた。 確認できた位置情報を事前にカーナビにインプットしておいたのだった。
まずは景色1の場所を目指して走り出すが、途中の道路標識で見つけた小さな村、San Quirico d'Orcia へと思わずハンドルを切ってしまった。 以前雑誌で写真を見て印象的だったのと、村の名前がオルチア渓谷をダイレクトに連想させるので気になっていたのだ。 ちょうど昼過ぎの小さな村には観光客もまばらでのんびりとした雰囲気が漂っている。 村をぶらぶらして美しい公園や風情のある建物などを見ているとあっと言う間に村を一周してしまった。 暑い日中はみなさんシェスタを決め込んでいるに違いない、夜になって涼しくなるとこの村もにぎやかになるのだろうなと思いながら駐車場に戻り、景色1を目指して走り出す。
カーナビの指示どおりに走っていると、指定場所の少し手前にその景色はあった。 広い空間、平原にぽつんと数本の糸杉がある風景。テレビで見たのと同じ景色だ! 車を道路脇に停めて感動しながらこの景色を眺める。 駐車場も、土産物屋もなにもない、ただその景色があるだけ。 美しい景色ではあるが、少し違和感がある、なんだろう? 平原の色が緑ではないことに気がついた。 テレビでは緑の平原に糸杉という絵だった、目の前の景色は小麦色の平原に糸杉だ、色が全然違うのだ。 なるほど、季節が違ったのか。 テレビの風景は、春だったに違いない。でも、小麦色の平原もなかなかいいね。
次に景色2を目指して車を走らせる。 カーナビから「目的地周辺です」というメッセージが流れる前からその景色は確認できていた。 はるか前方、小麦色一面の丘の上のほうに小さな緑の列が見える。 どんどんその緑が大きくなってきた、糸杉が一列になって並んでいるのだ。 列の端には小さな家が見える。 この風景はまさにテレビと同じだと感動! 平原の色はやっぱり小麦色だけれども・・・・・
この素晴らしい風景、車を道路の横に停めて眺めているが、景色1のときと同じく周辺には何もない。 本当に何もないのだ。 その場所まで行ってみたが、そこはアグリツーリズモだった。 アグリツーリズモというのは、イタリアの田舎の一軒家を宿泊施設にしたもので、「美しい景色を見ながら何もしないを楽しむ」という新しいバカンスのスタイルで最近人気を集めている宿泊形式である。 我々もこのアグリツーリズモに宿泊したいと考えたが、サマーシーズンは最低でも一週間の滞在が条件というところが大部分であきらめた経緯がある。 平原を突っ切る道路から丘の上の家までのまっすぐな道、その道の両脇に一定間隔で糸杉が立っているのだ。 青い空に白い雲、広大な平原に緑の糸杉、この風景がオルチア渓谷の風景なのだ!
この素晴らしい景色は飽きることがない、いつまでも眺めていたい風景だ。 しかし、時間が限られた旅行者には残念ながらゆっくりとしてえる余裕はない。 次の予定を思い出して、世界遺産の小さな村、モンタルチーノ(Montalcino)目指して出発した。 この村は、1888年に品種改良の突然変異により現れた大粒の葡萄によりその歴史を変えることになったとのこと。 この大粒の葡萄を使ったBurunelloと呼ばれるワインはイタリアを代表するワインになったのだ。 現代では世界遺産人気もあり、観光客が大勢訪れる村になっており、この有名なワインが格好のお土産となっているらしい。
Montalcinoは丘の上の城壁の村だった。 城壁の外の駐車場に車を停めてから坂道を登り、まずは村の端にある城壁に行ってみた。 城壁の中にはオルテカと呼ばれるワイン販売所があり、各種ワインを販売していた。 ここでは複数ワインのテイスティングもできるらしく、カップルがワイングラスを6つも並べてチーズとハムを食べながら美味しそうに飲んでいる、喉がごくりと鳴ったのだが運転手の私はトライできない、残念。 この城壁に登る頃から雲行きが怪しくなってきた。 怪しい雨雲がこちらに近づいてくるのが見える。 そういえば天気予報では雨になるといっていたな、昼過ぎまでは快晴だったのですっかり忘れていた。
城壁から眺めるオルチア渓谷の景色を堪能して降りてくる頃には、辺りはどんどん暗くなってきた、と思ったら突然大粒の雨が降ってきたぞ。 夕立だ、大変だ、道沿いのワイン屋の軒下で雨宿りすることにした。 通りに並んでいる店の連中は慣れたもので、展示していたワインを素早く店の中に片付けたりビニールをかけたりしている。 雨宿りしていたワイン屋の主人もあっと言う間に片付けて、店に鍵を閉めてどこかへ行ってしまった。
30分程雨宿りしていたが一向に雨は止まない、どんどん強くなってきたような気がする。気温は急激に下がり、寒くなってきた。 覚悟を決めて道の向かいのBARに入りコーヒーを飲みながら本格的な雨宿りを決め込んだ。 我々のテーブルのすぐ横の壁に飾ってあった絵、何となく見たことがあると思っていたのだが、何と雑誌のトスカーナ特集でMontalcino紹介の記事の中で掲載されていたものだった。、偶然とはおもしろいな。
結局1時間半くらいは雨宿りしただろうか?、雨脚が弱まってくるとまずあちこちで店の連中が商売再開の準備を始めた。 すると、あっという間に雨は上がって観光客もそぞろ歩きを再開だ。 我々も、気温が下がり過ごしやすくなったMontalcinoの村を散策する。この村はどこへ行ってもワイン、ワインだ。 お土産感覚でボトルを売っている店が多いが、グラスで飲ませる店も多くて、ワインがこの村を一躍有名にしたというのも納得できる。 しかしBurunelloワインは普通のワインの倍の価格だった。 日本のイタリアンレストランでは多分現地価格の4倍以上になるんだろうな!
この日はMontalcinoの南にある修道院に行くつもりだったが、予想外の雨宿りで時間をつかってしまい、修道院訪問は翌日に延期することにした。 途中で買い物などしながらゆっくりと、San Giovanni d'Assoの古城ホテルに戻った。
古城ホテルに戻ってからひと休み、夕食はホテルのレストランだ。 実は朝(といっても昼前だが)ホテルを出発するときに、女主人から「今日はレストランで夕食するわよね、何時に予約する?」と聞かれていたので、思わず19:30からの予約を入れてしまっていたのだ。 前夜にアンドレアの店に行ったのがばれたかな? 有無を言わさぬ女主人の迫力に負けてNo,Thank youとは言えなかったのだった。
ホテルと同様、このレストランは村に似合わず立派だった。 ボーイもいるし料理もしっかりしている、ワインリストもすごいのがあったが値段もすごい。 地元の美味しいワインをと言ってグラスでオーダーしたところ、何となく怪しいハウスワインが出てきた。ホテルの名前入りラベルのボトルなのだが、どうも直感的に怪しい。 案の定、味はボケた味だった。 前日、目の前でアンドレアがコルクを抜いたMontalcinoワインの味に比べると雲泥の差でがっかりした。
・・・・・・・・ to be continued

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