今日の目的地はラディコファーニという小さな村。 後半のハイライトはトスカーナ再訪なのだが、Civita とMontichiello の中間地点あたりで宿泊地を探していたところ、このラディコファーニ(Radicofani)という場所を見つけた。 日本のガイドブックにはほとんど記事はなくて、Lonely Planetに少しだけ解説があったのだが、「山の上の小さな村と村の中の岩山の上にある要塞跡を訪ねよう」と書いているだけ。 Internet上で宿泊場所を探すのだがまったく情報が出てこない。 村から離れたAgriturismoという農家ホテル(民宿)をやっと二軒見つけてメールを打つがどちらからも返事が来ない。 まあ現地で探すか!といつものように軽く考えて予約なしで出発したのだった。
Civitaを出発してボルセーナ(Lago di Bolsena)湖を通過しひたすら北へと一般道を進むと、進行方向遠くに「丘ような小さな山のような高い場所の一番上に何かが突き出た奇妙なもの」が見えてきた。 直感的には、プリンのような形をしており一番上には「ぷっちんプリン」についているような突起が見える。
車は渋滞のない、というか車がほとんどいない道をどんどん北上するのだが、右に左に正面にとその奇妙な形の丘が見え隠れしながらどんどん大きくなってくる。 一瞬見えなくなってもすぐに現れる。 まさかあれがRadicofani じぁないよね、などと話しているうちに、それはどんどん大きくなってくるではないか!
道路脇に「Radicofani」の標識を見つけて右に曲がると、その道はずーと前方に見えていたぷっちんプリンに向かって丘を登る道であることがわかった。 車は丘の上に向かって山道をどんどん登り高度を稼いでゆく、カーナビが目的地到着を告げた時には、その奇妙な形の丘の頂上付近まで山道を登ってきていたのだった。 小さな村と岩山の上に立っている塔のような建物が目の前にあった。 Radicofani という村が小高い丘の上にあり、村から更に高い位置の岩の上に塔のような建物があるというのが正確な説明になる。 この塔がぷっちんプリンの突起部分なのだった。
車を村の入り口に停めて宿探しを始めた。 花があちこちにある小さくて美しい坂道の村なのだが、ほとんど人の姿が見えないぞ。 ベッドのマークも宿泊の表示もまったく見当たらない。 村の入り口に一軒だけレストランがあるが人の気配がまったくしなかった。 道の標識を頼りにやっと見つけたインフォメーションオフィスは閉まっていた、昼まで開いていたが今は閉まっており夕方4時からまた開けると書いてあるような気がする。イタリア語なので正確には読めないのだが。
夕方の4時まで待つしかないのかと諦めていたら、坂道をゆっくりと歩くおばあさんを発見した。 挨拶して宿を探していると身振り手振りで言ってみたら、このおばあさんがついて来いと言って村の入り口のレストランまで案内してくれた。 このレストランはホテルでもあったのだ! ところがこのホテル、入り口には鍵がかかっていた。おばあさんはブツブツ言いながら裏口に回り大声で叫ぶと誰かが裏口から出てきた。どうも「ホテルは休みです、そんな無理を言われても使用人の私ではどうしようもありません」とおばあさんに説明しているように見える。 このおばあさん英語はまったくダメで、イタリア語はダメな我々に延々と話しかけるのだ、どういう訳か我々が宿が見つからなくて困っていることだけは通じてしまっている、困ったなぁ。
おばあさんは悪態をつきながら歩き出す、これ以上おばあさんに迷惑は掛けられないと思い、お礼を言って別れようとするが、事はそうは簡単には済まなかったのである。 おばあさんは突然自分の携帯電話を取り出して私に携帯電話を持っているかと聞いてきた。私が携帯電話を見せると、Mauroに電話しろと言いながら自分の携帯電話のアドレスブックを見せるのだ。 確かにMauroという名前があるぞ! 私が、Mauroって誰?電話してからどうするの?などと質問してなかなか電話しないでいると、おばあさんはついに自分でMauroに電話し始めた?!
電話が終わると、おばあさんは私が案内するので車に乗せろと言い出した。いったいどうなることやら、参ったなあと思いながらおばあさんの勢いに押される形で仕方なく車に乗せると、おばあさんは大声で道案内を始めたのである。 Mauroの家は車で1分の場所にあり、何とその家の前にはMauroの奥さんが我々を待っていた。 奥さんの怪しい英語での説明では、夕方の6時にここにくればMauroがAguriturismoへ案内するという話らしい。 値段を交渉し、夕食について確認して契約成立。 おばあさんがここまで親切に世話を焼いてくれた話を断ることもなんてできるわけないでしょう!!! このとても親切なおばあさんを村のお家に送り届けて宿探しは一件落着となった。 我々が日本語と英語と怪しいイタリア語で丁寧にお礼を言うと、この親切なおばあさんはとても満足そうな表情でうなずき去って行った。
夕方の6時まではまだまだ時間があるので、塔のような建物に行くことにした。 村からの一本道をどんどん登り、廃墟のようなものを通過しとても可愛らしい墓地を通過しながら更に山道を登って行くと、道の突き当りが入り口だった。 驚いたことにカフェがあり、ここで入場料を払うシステムだ。 ここは要塞の跡だと聞いて納得、トスカーナの南の端に位置しているRadicofani、世界遺産に指定されているオルチア渓谷にはこの村も含まれている。 この要塞跡の塔の最上階からは360度の方角で遥か遠くまで平原を見渡すことができるのだ。
塔の上からの眺めは素晴らしい! 多分この塔がこのエリアでは最も高い建物で、どの方向を見ても文字通り「遥か彼方のずーと向こう」まで見渡せてしまうのだ、まったくなんという雄大な景色なんだろう!
この場所にいた2時間程の間に我々以外には二組の観光客が来ただけ、まったくのんびりしたものだ。 要塞跡でサンドイッチのランチ、なんか毎日こればかりだなぁ。 ランチしてからしばらくこのすごい景色を眺めていたのだが、突然雲行きが怪しくなってきたのでカフェに戻りコーヒータイムにした。すると突然大粒の雨が降ってきた!濡れなくてラッキー。 しばらくすると雨が上がり日がさしてきたので出発、坂道を下りRadicofani の村へと戻った。
・・・・・・・・ to be continued

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