★ ピエンツァ ★


   さて、念願だった「丘の上の小さな教会(礼拝堂)-景色4」にも苦労はしたが到達することができた。 その美しい景色を十分に楽しんでとても満足した我々は、今夜の宿があるピエンツァへと向かうのだった。 

ピエンツァの宿は当然昨年と同じAndreiのB&Bだ。 車を中庭に停めると玄関の扉が開いて誰か出てきたぞ、あの懐かしい顔は Andrei だ! 「君達を覚えているよ」と言いながら、シーズンオフの冬の間に頑張って仲間と一緒に内装を全面的に改装したよ、とうれしそうに説明を始めるのだった。 壁のペンキも塗りなおしたし、朝食のシステムも変えてグレードアップしたんだよととても得意気だ。 少しは陽気になったのかなと驚く。

事前にお願いしておいた「2階の昨年と同じ部屋」に通されると、確かに壁がきれいな色に変わっている、壁の絵もセンスのよいものになっていた。 別の部屋みたいだな。 でも窓から見える景色は変わらず、のんびりとしたピエンツァの風景は以前と同じだった。 なぜか我が家に帰ってきたように気分がゆったりとするのだった。

 彼は、部屋の中で新しくグレードアップした朝食システムの説明を始めた。 昨年は、1階の部屋(食堂と呼ぶほどの部屋ではない)に朝食が準備されていてセルフサービス。 パン、ハム、チーズとジュース、コーヒーという質素な内容だった。 
このときに許せなかったのは、準備されているすべてものがどう見ても近くのCoopで買ってきたものをそのまま並べているだけであったことだ。 この朝食の貧弱さはWebの口コミでも散々書かれていて、玄関に置かれた自由帳にも相当書かれていた。 彼としては最優先順位で対応すべき改善項目であったはずだ。
 
朝食のグレードアップは以下の内容であった。
1. 全ての部屋に大型冷蔵庫を設置した
2. 冷蔵庫の上には最新型コーヒーメーカーを置いた
3. 冷蔵庫の中には朝食が全て準備されている

彼が出て行ってから冷蔵庫の中をチェックして驚いた、そこには昨年とまったく同じ「Coopで買ってきたまま」の、「ビニールで個装されたパン、ハム、チーズ」、そして「紙パックのジュースと牛乳」があって、コーヒーメーカーは小さなカプセルをセットする半分インスタントのものだった。

彼の自慢の朝食グレードアップというのは、要するに「素材は同じ」で「食堂から部屋食に変えた」というだけだったのだ。 どうやら彼は大きな勘違いをしているようだ。 でも、かわいそうだから何も言わずに、今回も貧弱な朝食で我慢することにしたのだった。 フランチェスカの家の手つくり朝食が懐かしい。


チェックインのときに彼から「WiFiシステムの設定がうまくゆかないので見て欲しい」と頼まれていたのを思い出した。 1階に行ってみるとなにやら装置をいじくりながら悩んでいるではないか! 聞くと、無線LANは1階の装置から電波を飛ばしているが2開の部屋では電波が弱く受信できない、改善のために無線ルータを買ってきたのだけれどうまく動かないとのこと。

このB&Bは「フリーWiFi」 が売りだとHomepageに書いてあったことを思い出した。 昨年は朝食(1F)のときは通信できたが部屋(2F)では電波が弱くて通信できなくて、廊下のドアを開けて通信していたのを思い出した。 なるほど、朝食の次は通信環境の改善という話だな。 無線ルータをリピータとして使いたいらしい、でも彼が買ってきた装置の説明書は英語を含む数ヶ国語で書かれているが、何とイタリア語は見当たらない! 英語が不得意な彼はこの説明書を読みこなせなくて四苦八苦しているという訳だ、まったく抜けた奴だと呆れてしまった。

彼曰く、「日本人はみんなこの手の電気製品の設定や調整は得意だと聞いている、頼むよ!」 そこまで言われては引き下がるわけにはゆかない。 英語の説明書を解読し、現状のADSLシステムについて質問しながら手順どおりに進めてゆく。 30分が経過し、これは簡単には行かないことが判明した、どうも現状システムの設定を変更しなけれならないないようだ。

外はまだ明るいけれどもう夕方だ、このままでは深みに嵌り徹夜かもしれないと考えた私は、彼に「これは深刻な状況だ、私にはとても手に負えない、友人のパソコンおたくを連れてくるか買った店にヘルプを出したほうが良い、ごめんね」と冷たく言い放ってそのまま装置を放置して外に出掛けたのであった。

ああ、可愛そうなAndrei、その後無線LANシステム機能拡張はうまくいったのだろうか、と心配している私であった。


 5月のピエンツアの町並みは夏のそれとは違っていた。 金曜の夕方、通りには花屋さんが出てきており所狭しと花を置いていた、観光客が多い。 一番びっくりしたのは広場だった。 夏には「ただの広場」だった場所が、なんと美しい花壇となっていて華やかな雰囲気を醸し出していたのだった。 うーん、世界遺産の町に相応しい広場にするべく予算をつけて花壇を作ったのか、この時期は季節限定の花壇が現れて夏には撤去されてしまうのか? わからないなあ。

すっかり美しくなった感じの町をそぞろ歩きする、城壁から見るオルチア渓谷の夕暮れは相変わらず美しく、思わず息を呑むような絶景であった。 


 さて、お腹が減ってきたぞ。 夕食は夏に満席だと入店を断られたレストラン Luna (Trattoria Latte di Luna) に行くことになっていた。 前回の経験を活かし、この有名なレストランは前日フランチェスカに予約してもらっていたのだった。 開店直後に行くとまだ客はまばらだった、ワイン、スープ、ピチ、そしてフランチェスカも大好きだという名物料理の「子豚のロースト」を注文した。 スープはポルチーニで高級な味がした、ピチは上品な味で美味しかった、子豚のローストは他のテーブルもみんな食べているような感じだったので多分これを目当てに来る客も大勢いるのだと思ったが、味は少々しつこい感じで特に皮が目茶苦茶油っぽかった。 頑張って食べたけれど完食できずにギブアップ、他のテーブルではお年の人たちもきれいに全部食べている、恐るべしイタリア人の胃袋。


夕食をゆっくりと楽しんでいると時間は夜の9時になっていた、やっと外が暗くなり始めた。 胃の中が油だらけになったような気がしながら夕暮れの町をぶらぶら歩く。 さすがに夏と違い日が落ちると寒いが、済みきった空気の夕焼けはほんとうに美しいと感動。 




・・・・・・・・ to be continued


 オルチア渓谷と小さな礼拝堂 ピエンツア周辺の村



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