ザモシチに別れを告げて快晴の空を眺めながら、車は次の目的地へと走り出した。 道路はガラガラで快適なドライブ、道路標識はわかり易くて、ロータリー交差点にもこの国のセンラーラインオーバーしてくる車を避ける運転にもすっかり慣れた私は、鼻歌交じりで気分良く運転していたのであった。
次の目的地は「カジミエーシュ・ドルニイ」で、”川沿いのとにかく美しい村”という記事を読んで決定した。 しかし、この村に向かう途中の道で妙なことに気が付いた。 対向車が徐々に多くなってくるのである。 小さな静かな村であるはずのドルニイにこんなに人がいるはずもないし不思議だなあと思いながら車を走らせていると、村の直前になって突然大駐車場が目の前に現れた。 何だこれは! と驚いていると車は駐車場を通り過ぎてしまい、村の中心部に差し掛かり、あれあれ・・・ ものすごい人が目に入ってきたではないか。 そのときになって初めて、ここは大観光地だということに気がついたのであった。 この国の夏の、それも3連休の真ん中にこの村を訪れる計画は、今から考えると相当無茶だったと思っている。
村の中心はすごい人で車を止める場所もない、仕方なく村の手前の例の大駐車場に入るとお兄さんが現れて集金にきた。 金をとるとはさすが観光地だ。 駐車場から村の中心へと徒歩で戻り予約していたホテルを探す。 目的のホテルは1階がレストラン、2階が美術館の村の中心にある建物で、部屋は3階にあった。 ホテルというよりもB&Bのような簡単な作りで、古い建物であるが我々の部屋は窓が斜めになった高い天井の天窓一つ、電話もない部屋だった。 受付にいたお姉さんは良い部屋でしょうと威張っていたがちょっとねえ、でも安い部屋だから仕方ないか? 隣が駐車場なのだがゲストは特別料金で半額にすると言う。 普通は無料でしょうが、本当に観光地は困ったものだ。 チェックインを済まして村をぶらついてから車をホテルの駐車場(これがまた有料で、宿泊客は半額などとふざけたことを言っていた)まで移動させる。
夕食は、センスの良さそうなレストランを探した。 最初予約しようとして部屋が空いていないと断られたペンションの1階レストランが雰囲気良そうなので入ってみた。 今回の旅行ですっかり好きになったポーランド特有のスープとどこで食べても美味しいジャガイモなどをオーダーして、楽しい夕食のひと時を過ごしたのだった。
翌朝は早く起きて観光客のいない村を散歩しようと計画だ。 準備万端で出かけようとしたが、信じられないことが起きた。 部屋のドアが開かないのだ。鍵がロックされてキーが回らない。 押しても引いてもどうしても全然回らないのでドアが開かない、窓はとんでもなく高い位置に天窓が一つだけ、電話は部屋にない。 つまり我々は密室に閉じ込められたのだ。
しばらく鍵とドアと格闘したがついに諦めた、日曜の朝早い時間なので誰も部屋の前を通らない。 事務所のお姉さん(モニカという名前だが)は前日我々に緊急連絡用の携帯電話の番号を渡して、明日は日曜だから朝食はゆっくり10時からにしてねと言っていたのを思い出した、まだ8時前だぞ。
窓からの脱出は場所的に高すぎて無理と諦めた。 仕方なく便箋に「助けて! 鍵が壊れて開かない、閉じ込められた、だれかモニカに連絡を!」 と書いてドアの下から廊下に出しておいた。
10時前になってやっと誰かが廊下を通りかかりメモを読んで騒いでる、しばらくするとやっとドアが開いた。
脱出してから携帯電話でモニカと話したが、私にどうしろと言うのなどととぼけている、あとからちゃんとチェックしろと言って怒りの電話を切った。 朝食後にチェックアウト、モニカは現れず別のお姉さん。 彼女は鍵をチェックしにきて、ほら大丈夫よ、あなたたちの操作が悪いんじゃあないなどと言っていた。 彼女を部屋に入れて今朝と同じ状態を作って見せて鍵が回らないことを見せて、ようやく彼女は鍵がおかしい事実を理解し納得した。
こちらは朝の散歩が出来なくて怒っていたので、宿泊料金を安くしろと迫ったが頑として受け付けない。 仕方なく支払ったがどうも気分が悪い。 隣の駐車場のおばさんには、もう少しこのあたりをぶらぶらするので車はもう少しこのままでお願いと言って、すでに観光客が増えてきた村の中心へと繰り出した。
広場から坂道を登って城壁、見張り塔、3つの十字架の丘へと行ってみた。 丘からは村が一望できて素晴らしい景色に出会うことが出来た。 しかし道の途中におじさんが頑張っていて料金を取っているのは流石にあきれた。 ちょっとやりすぎでしょう。
ずーと起伏のない地平線ばかり見てきたので、この川と丘の緑に囲まれた村は新鮮だった。 多分、そうだからこそこの小さな村がすごい観光地になっているのだと思う。
丘から広場へ戻って、名物らしい焼きたての「ニワトリの形のパン」を買ったり、路上で売っている「ラズベリー」を買ったりしながら、村をぶらぶらした後でホテルの駐車場に戻る。 駐車場のおばさんには一言「駐車料金は払わない、文句はモニカに言え!」と言い捨てて駐車場料金を踏み倒したのであった。
朝から部屋に閉じ込めておきながら、謝りもなく顔も出さなかったモニカさん、文句があるなら日本まで取りに来い、払ってやろうではないか。
・・・・・・・・ to be continued

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