ポルトのホテルをチェックアウトして、荷物を引きながら長い坂道を上ってゆく。 AVISのオフィスは坂道の上にあるのだ。 前回はこの坂道の長さに根を上げてしまい、途中のカフェで休憩までしてしまった。 今回は体力温存作戦で臨んだので一気にAVISオフィスまで到着することができた。
AVISのオフィスでは、愛想のよいおじさんが手際よく手続きを済ませて、車庫から車を出してきた。 なんだなんだ、この車は! 予約はCクラスであったのだが、なんとGクラスのルノーがそこにあった。 予約したクラスより上のクラスが準備されることは良くあるが、CからGだと4段階のアップグレードになる。
ヨーロッパの古い町のダウンタウンは道が狭く曲がりくねっており、路上駐車がものすごいので小回りの効くコンパクトカーが最適と信じている私は、この大きな車を見て少しショックであった。 しかし、高級車もたまにはいいかと前向きに考えて、この大きな車でドライブを開始することになった。 このアップグレードされた高級車がその数時間後には大トラブルを招くとは、この時には想像すらできなかったのであるが・・・
一方通行だらけの道を、AVISのおじさんが手書きで書いた地図を頼りに進み無事高速道路に入ることができた。どうも車幅が広くて運転しにくいな。 いつものとおり最初のサービスエリアでゆっくりと休憩をとる。 ドライブは順調で、高速道路を快調に飛ばしてあっという間にギマランイスのインターチェンジに到着した。
町に入ると予想通り道は狭く坂が多くて一歩通行だらけ、この狭い道に路上駐車し放題で運転しにくいことこの上ない。 町に入った途端に標識が不親切になって現在位置が把握できなくなってしまった。 いつものようにいったん車を停めて現在地を確認しようとするが駐車スペースがない。 やっと見つけたスペースに車を停めようとして車を道路脇に寄せたら右の前輪が少し歩道に乗り上げてしまった。 その瞬間「シュー」という嫌な音が聞こえた! 通行人が変な顔でこちらを見てるぞ、まさか!! まさか!!
−−−−− パンクだった。
変な角度で前輪が乗り上げたのが原因だろうと思うが、こんなことくらいでパンクするとは信じられない!
高級車は重量が重いことが原因か、弱いタイヤが使われていたのか、角度がたまたま悪かったのか、原因はわからない。 確認してみると、完全にタイヤがフラットになっていた。 英語でパンクのことをFlat-tireというが、これを見たときにそれを実感し納得した。 さてどうしようか? 後部トランクでスペアアタイヤとジャッキを発見したのでタイヤ交換はできそうだ。 でも車工場はどこにあるのか知らない、果たしてここはギマランイスなのか途中の町なのかもわからない、なんせこの町には生まれて初めて来たのだから。
日本から持ってきた携帯電話でポルトのAVIS事務所に連絡をとろうとしたが、なぜか繋がらない。 日本のAVISに電話したが、留守電話がサービス時間でないので明日かけ直してくださいと繰り返すだけ、そうだよく考えたら日本は真夜中じゃぁないか。
仕方なく、いろんな人に聞きながら現在位置を確認してから車をそのまま路上に放置して、タクシーで予約していたホテルに向かった。 ホテルから車を借りたポルトのAVIS事務所に電話した。 先程の愛想の良いおじさんが出たぞ、ラッキー助かった。 状況を説明して「誰か至急こちらに寄こして、パンク修理対応して欲しい」と頼むと、「そのようなービスはないので対応できない」と冷たい返事。 じゃあどうすればよいのだと聞くと、「自分でタイヤを交換して、修理工場に持ってゆき、新しいタイヤを買って装着し、スペアタイヤを元に戻すこと」とおっしゃる。 修理工場はどこにあるのかと聞くと、それはわからない、自分で見つけてほしいとおっしゃる。 おいおい、それはないでしょう? こちらは困っているのに助けてくれないのか!
天下のAVISなので、パンクの修理サービスくらい当然世界中でやっていると思っていた私だった。 AVISに連絡さえつけば解決すると考えていた私が甘かった。 頭にきたので、工場の場所なんて知らないぞ、じゃあスペアタイヤに交換してそのままドライブを続行するぞと言うと、「それはお勧めできない、スペアタイヤでは60kmしか走行できない」などとおっしゃる。
AVISとしては、交通事故などのアクシデントで車が使えなくなった場合には緊急出動対応するが、パンクは緊急事態でもなんでもなく出動対象ではないとの説明だった。 しつこく食い下がる私に対し、遂におじさんの愛想もなくなって、最後は冷たく「いくら言っても駄目なものは駄目、自分で解決するしかない」と言い放たれてしまった。 愛想がいいと思っていたおじさんだったが、結局は血も涙もない冷酷な奴だったということか、この車をスペインで乗り捨てるのが残念だ、ポルトに戻るのだったらおやじと勝負できるのに! 予約指定のとおりのCクラスだったらこんな災難はなかったのに、と相当悔しい気分になった。
さて困ったぞ、どうすれば良いのかな? 今日はドライブのまだ初日だぞ。 気を取り直して、ホテルのフロントのお兄さんに状況を説明して助けを求めた。 救う神あり!!、このお兄さんがとてもよい人だった。 私の説明を聞いた彼は状況を理解してくれて、あちこちに連絡してくれたがなかなかうまくゆかない。 最後には自分の親戚に連絡して、その親戚の人が対応してくれることになった。 結局彼はその親戚を私が放置した車の場所まで案内し、スペヤタイヤに交換し、近くの工場に運んで通常タイヤに交換して、車をホテルまで届けることを約束してくれた。 なんて親切な人なんだと泣きそうになった、ポルトのAVISのおっさんは少しは見習うべきだぞ!
親切な彼にすべてを任せてしまい、気が抜けてしまった私は何もせずにホテルの部屋でお休みしてから夜になって確認にゆくとすべてOKで修理は完了したが、ホテルの駐車場は今日は車が多くて駐車スペースがない、今夜は修理工場に置いて明日の朝にホテルまで持ってくるとのこと。 それを聞いてやっと安心できた私は、空腹に気がつき夕食へと出かけたのであった。
夕食は、ホテル近くのレストランへ行った。 Lonely Planetで紹介されていた店はほぼ満員だったが最後の空きテーブルにすべりこんだ。 魚と肉の料理をオーダーしたが、ボリューム満点でとても美味しかった。 久しぶりのポルトガルビールと前夜に引き続きVino Verdeワインをオーダーした、両方ともおいしかった。
夕食に満足してレストランから外に出ると、大勢の人が歩道に椅子を並べて座っている。 夕涼みにしてはすごい人数だなあなどと思いながら、腹ごなしの散歩を兼ねて町の中心付近へと向かった。 メイン広場のカフェは全て満席ですごい人だ、異様な雰囲気を感じながらどんどん歩いてゆくと、ものすごい数の人がメインストリートに集まっているではないか。 みんな何かを待っているような感じだな。 やっと理由がわかった、ポスターによると本日は年に一度のお祭りの当日だったのだ。 23時からパレードがあるということで、みんなそれを待っているのだった。
なるほど、レストランが満員だったのも町に大勢の人が繰り出していたのも、週末の祭りの夜だったからという訳か! 偶然この祭りに遭遇した幸運を喜びながら、眠いのを我慢して23時まで待ったが一向にパレードは始まらない。 人はどんどん増えてきてすごいことになってきた。 23時30分まで待っても始まらないので、眠い私は諦めてホテルに戻った。 フロントで聞くとまだ1時間くらいは待たないと始まらないだろうねえと軽く言われた。 諦めて寝ることにした。
その後、このお祭りの夜、夜中には大変なことになってしまった。 12時過ぎから外は大騒ぎとなったのだ。パレードが町中を練り歩き、一団がホテルの前を通るたびに大音量と派手な爆竹の音が騒がしくて振動もすごい。 小さな町を練り歩くパレードは同じコースを回るらしく、一定間隔でホテルの前を通過するものだからとても眠れない。 結局、夜中の3時過ぎまでパレード騒ぎは続いたのであった。 私は昼間のパンク騒ぎの対応で疲れ果ててしまっており、夕食のワインが程よく回り、残念ながらこの熱狂パレードを見ることができなかった。 この夜は町中が年に一度の大騒ぎだったに違いないが、まったくこの国の人達はどういう常識で暮らしているのだろうか? などと考えてしまった。 まあ、これも旅の醍醐味ということで納得したのではあるが。
・・・・・・・・ to be continued

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