★ プトナ と アルボーレ修道院 ★


 リズミカルな馬の蹄の音で目が覚めた。ペンションの前の道を馬車が走っているのだ。 この地方の朝の風景は、仕事に出かける人たちの馬車が道路の主役なのだ。 しばらくすると子供の声が騒がしくなってきたので窓から様子を伺う。 バスで子供達がやってきて道路の向かいのセラミック工場へ次々と入ってゆく。 窓から見ていると、車がどんどんやってきていろんな人たちがこのセラミック工場に入ってゆくのだ。 興味が沸いた我々も部屋を抜け出してこの工場を見に行った。 ここは陶器を手作業で作り即売している工場だった、轆轤(ろくろ)を回しながら作る作業は日本の焼き物と同じだ。 作業場の横の小さなショップに並べられている小さくて手頃な値段の陶器が飛ぶように売れてゆくのに驚いた。 この工場は我々のペンションと同じオーナーが経営しているのだと思われる、名前が一緒だから。

 ペンションに戻り広いレストランで朝食だ、貸切りだけれど宿泊客は我々だけなのかな? 朝からまた停電なのでBGMもい静かなレストランだ。 コーヒーがインスタントでまずい、昨夜飲んだコーヒーは美味しかったのにと不思議だったが、停電でコーヒーメーカーが動かないからだと納得した。 朝食後に大きな機械を運んできて動かしているおじさんがレストランの前にいた、このおじさんがペンション/レストランのオーナーだった。 朝から停電で頭に来て電力会社に電話したが、午後にならないと復旧しないと言われたのでこうして自家発電装置を持ってきてセットアップ中だと言っていた。 このおじさんはとても親切で、近くの修道院について次々に説明してくれた。 面白いオーナーだな。

 さて、天気は快晴で気分良く北へと車を走らせてウクライナ国境近くの山の中にあるプトナ修道院へと向かった。 山道をどんどん奥へ進むと、その突き当たりに城壁に囲まれた立派な修道院があった。 ここプトナ修道院はルーマニア正教会の修道院で、外壁には壁画が一切無く白でまとめられた美しい建物が城壁の中の真ん中にある。 その姿はバランスが良くてとても印象的であった。 この修道院でも黒い服の修道女を多く見かけた。 世界遺産に指定されていないのは外壁に壁画がないからだろうか、不思議だ。 山の奥にあるこの修道院であるが、意外なことに大勢の観光客がいたので驚いてしまった。


 プトナ修道院に別れを告げて、ペンションに戻ってから少し休憩。 午後からは南へと車を走らせアルボーレ修道院へと向かった。 アルボーレ修道院は前日には時間がなくて寄れなかった修道院だ。 地図に書かれていた修道院がある道路は舗装の大工事の最中であった。 大工事の作業の中を突っ切り車を走らせるがそれらしき修道院は現れない。 気にせずどんどん進むと、道は未舗装になり砂利道になってしまった。 なんとも運転のしにくい砂利道をひたすら進むが道路状態は悪く、道路に開いた穴を避けながら慎重に車を走らせる。畑の真ん中の砂利道を延々と走るが景色はほとんど変わらない。

1時間もそうして進むが、馬車と巨大な農業用の車に時々出会うだけだ。 ルーマニアの田舎ではこのような道が普通であり、舗装されている道は幹線道路だけということにあとから気が付くのであるが、このときはまだ知らない。 このような道を普段から使っているのは馬車なのだ、舗装された幹線道路があとからできたので当然馬車もそこを走ることになる、だから「馬車が普通に道路を通行している」「車は馬車を順番に追い越しながら走らなればならない」という不思議な状況が出現するということになる。 たった二日この地方で車を運転しただけで、すっかり「馬車の追い抜き方」が身に付いてしまったのが面白い。

畑の中の砂利道を延々と進み、やっとの思いでそこを脱出し舗装道路に戻り再びアルボーレ修道院を探す。 今度は作戦変更して地図は信用しないことにした。 修道院はどこですか? を村の人に次々と聞きまくる作戦だ。 片っ端から村人に同じ質問をするのだが、みんな相当適当に答えるのであきれてしまう。 しかしこの作戦で確実に目的地に接近することができて、ついにアルボーレ修道院を発見することができた。

なんと地図の場所が完全に間違っていたぞ、そして最初にこの道路に沿った壁に隠れて見えない修道院の横を通過したときには、大きな観光バスが停車しており、修道院の表示がそのバスで隠れてしまい気づかなかったということが判明した。 アルボーレ修道院はとても小さな修道院だった。 世界遺産に指定されているのに駐車場もなく、中にはおばさんがたった一人で絵葉書などを売っていた。 修道僧はいないようだ。 残念ながら外壁の壁画は損傷が激しくは絵はすっかり剥げ落ちてしまっている。 修道院には我々とおばさん以外には誰もいなくて静か、とても素朴な場所であった。

修道院の近くの道路脇で、電柱の上にコウノトリの巣を発見した。 しばらく見ているとコウノトリが巣に戻ってきた。 なんとも平和な風景だなあと思いながらしばらく見ていた。



・・・・・・・・ to be continued


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