シビウのペンションのちょっと怖い女主人に追い出されるようにして荷物をピックアップ、車に積み込み次の目的地であるホレズ修道院へ向かって車を走らせる。 幹線道路のドライブは快調であったが例によって工事箇所が矢鱈多い。 工事による片側通行が頻繁にあり、この待ち時間で余計な時間を消費してしまうのだ。
しかしこの国のクレージードライバーには恐れ入る。 制限速度50キロの道路を、ぼろ車のアクセルを目いっぱい踏んで時速80キロで走る私の真後ろにピタリつけて、一瞬の隙を突いて猛加速で抜き去ってゆく。 この追い抜きが尋常でなく、どう考えても無謀な追い越しをかける連中が相当の割合でいるのだ。 対向車はいないという前提でまず追い抜きかけてから、対向車が見えたらそのときに考えるという感じの無謀さなのだ。 大型トラックも例外ではなく私の真後ろからパッシングの嵐、パッシングの次は大音量のホーンを連続で鳴らされる。 これは相当怖い、スピルバーグの映画「激突」を思い出さずにはいられない。
この日だけで事故直後の様子を2件目撃した、2件とも車は大破しており激しく激突したことがわかる、あんな運転をしていたら事故も派手になるわな、などと思いながら事故見物の渋滞を通過する我々であった。 途中で道に迷ったり、ドライブインで休んだりしながらゆっくりと走り、やっと山奥にあるホレズ修道院に到着した。
修道院の入り口にある綺麗なペンションに空室がありチェックインした。 世界遺産の修道院近くには宿泊施設はたくさんあると予想していたが、案外見かけなかった。 土曜日なのでここは満室かと心配したが、なんとこのペンションの宿泊客は変なオヤジグループと我々だけであったことが後からわかった。 部屋で一休みしてから歩いて修道院へと行ってみた。 運転中は快晴であった空模様が急に怪しくなり雨が降り始めた、この地方の典型的な天気の変わりようだ。 雨の修道院は静かで落ち着いた雰囲気であった。 ブルガリアの山奥にあるリラの僧院を思い出してしまった。 ホレズ修道院、雨の中、ただ静かに時間が流れてゆく。
二時間もこの場所にいただろうか、空はだんだんと明るくなり、なんと晴れてきた。 修道院の中には花があちこちに配置されており美しいアクセントとなっている。 この修道院は現在でも多くの修道士たちが信仰の暮らしをしており、夕方になると食事時間が昔と同じく木を打ち鳴らして知らされる。 木を打つ音が修道院に鳴り響く。
宿に戻って夕食、1階のレストランのグループ用の大きなテーブルがある部屋を我々二人で占領してゆっくりと食べた。 食後にベランダでビールを飲んでいると、周囲は真っ暗でとても静か、変なおやじグループの連中が中庭で飲みながら話す声が時々聞こえるだけだ。 よくこんなルーマニアの山奥まではるばる来たものだとあらためて感じた。 夏だというのにこの山奥の夜は肌寒かった。
翌朝、起きると涼しくて寒い。 朝食を済ませてから修道院へ行った。 まだ観光客はこない時間だと思っていたが驚いたことに修道院には大勢の人が来ていた。 みんな地元の人たちで日曜の朝のミサに来ていたのだった。 朝の修道院には音楽と修道士の声が鳴り響き、厳かな雰囲気に包まれている。 黒い衣装に身を包んだ修道士が大勢ミサに参加している。 前日の観光客たくさんの雰囲気から一変し、ここがルーマニア宗教にとって非常に重要な場所であることが思い出される雰囲気。 この敬虔な雰囲気の中に我々は1時間以上もいただろうか、残念ながら我々は旅行者なのだと思い出して、ペンションに戻り、この山奥の修道院に別れを告げたのであった。
・・・・・・・・ to be continued

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