◇ アラルコン-1 (Alarcón-1) ◇


 翌朝、宿のオーナー Isabelに挨拶してからチェックアウト。Isabel という女王のような名前のオーナーと話して私が理解できた範囲ではあるが、彼女は普段はバルセロナで仕事しているとのこと、グエル公園の横に住んでいるらしい。 夏のバカンスの期間だけ、生まれ故郷のこの実家に戻り過ごすのだそうだ。 実家の部屋を夏だけ旅行者に貸しているとのこと。24歳の娘がいて仕事で台北に住んでいるらしい。

この宿、名前を二つ持っているのだった。 Trip Advisor と Booking.com にそれぞれ違う名前で登録している。 我々はTrip Advisorから予約していたのだが、建物の入り口には Booking.com登録の名前だけの表示されていた。

これじゃわかるわけないよな。驚いたことに、この二つの名前の宿は両方の予約サイトでそれぞれ相当な高評価を維持していることだ。どーして違う名前で違うサイトに登録しているのだろう・・・ 不思議・・・


 さて、アラゴン地方に別れを告げてカスティーヤ地方へと向かう。 車を西へと走らせていると地図で途中の道の横に「ピカピカマーク」があるのを見つけた。

スペインのドライブでは、カーナビの補完目的で日本の政府観光局でもらったスペイン全土の詳細地図帳を使うのだが、この地図のあちこちに「ピカピカマーク」がある。 このマークの場所は「見どころ」なので、ふらりと立ち寄ると思いがけず素晴らしい景色に出会うことが多い。

地図を頼りにメイン道路を左折してみる。 風景が変わり、道に沿ってむき出しの地層が見えるようになってきた。 前方は、荒涼とした大地の景色になる。 どこが見どころなんだろうか、と考えながらどんどん進む。

途中、恐竜の標識などを見ながら道を進むと山に突き当たり、その山の中腹に小さな村がありここが終点だった。 シェスタなので誰もいない、あっという間に村を通り過ぎてしまった。

雰囲気的には、炭鉱の村かな。 村の子供が二人家の前にいたが、興味津々の顔つきで「ガン見」されてしまった。 これ以上は狭い山道なので車では進めない、仕方なく元の道に戻ることにした。 ピカピカマークは、たぶん、むき出しの地層だったのかもしれない。

元の道まで戻ってきてドライブを続けようとした途端、車にアラームが出た! 運転席目の前の表示板に「オイルの絵」が黄色で出現したのだ、スペイン語で何か書いてある。 なんだこりゃ・・・

ちょうど見つけたガソリンスタンドでガソリン入れたついでにこの表示を確認してもらった。 スタンドの人全員3人が集まってきた、説明によると「これはオイル警告だ、あまりに気温が高いのでエンジンオイルが減ってしまった、この先の町の店でオイルを補充すれば消える」とのこと。 ここでオイル入れて欲しいと言ったら、ここにはないとのこと、残念。

確かに気温は40度もあり外は無茶苦茶暑いのだった、エンジンルームも高温になっているに違いない。 このオイルアラームは日本でも昔見たことがあるようなないような・・・

少しエンジンを冷やしてみるかな、とドライブインで休憩をとって様子を見ることにした。


 ドライブインで休憩してからスタートするが、オイルアラームは消えない。 そのまま1時間以上、高速道路経由で走り続けると目指すアラルコンに到着した。

村に入る手前で右手の道路脇に見晴らしが良さそうな場所があったので、車を停めて行ってみた。 道路からは見えなかったのだが、ものすごい景色が目の前に出現していた。 これがアラルコン (Alarcón) なのか!

快晴の空の下、青い色の川が蛇行していてその川の断崖絶壁の上にお城が見えた。 あのお城がパラドールに違いない。 しばらくこの絶景を眺めていた。

パラドール目指して車を進める。 やはりこのお城がパラドールだった。 チェックインした部屋は107号、角部屋で左の窓の外はそこが城壁で、右の窓からはさっき立ち寄った丘と蛇行する川を見渡すことができた。

このパラドールには「Marques de Villena」という名前がついていて、107号室には「Juana Manuel」という名前がついてた。  部屋に入ると「説明文書」がベッドの上に置いてあった。

8世紀に建てられてから破壊と再建築を繰りかえしたお城の歴史と、Marques de Villena はビジェーナ伯爵で14世紀の所有者であること、この部屋が当時の領主であった女王の Juan Manuel が住んでいた部屋だと書いてあった。

この古城ホテルはパラドールの中で収容人数が一番少なくてたった14部屋で28名であることから、予約が取り辛いのだ。 ずいぶん前に予約しておいてよかった、こんなに素晴らしい古城ホテル体験はめったにできない。

夕方の村を散策する、まだ日差しが強くシェスタの時間なので村は閑散としていた。 インフォメーション(奇跡的にオープンしていた!)でお姉さんに見どころなど確認して地図をもらってから、駐車場に戻る。

車のアラームを確認するとまだ点灯していたので仕方なくエンジンオイルの量をチェックすると、なんと「minimumラインぎりぎり」だった。 レンタカー会社のお姉さんよ、ごちゃごちゃ偉そうにいろいろ言う前に基本的なチェックくらいしておけよ!とぶつぶつ言うしかないのだった。

さて、夕食かな。 パラドールのレストランは避けて村のレストランに行く。時間は20:30では村一番人気のレストランはまだオープンしていなかった。 オープンするまで、パラドールの横の見晴らし台からの景色を見ながら過ごそうということにした。気温が下がってきて吹く風が気持ちよい。

夜になって人が多くなってきていた。 突然若いおにいさが近寄ってきて「写真とってくれませんか?」と言われた。 いいですよというと見晴らし台まで連れて行かれた、そこにはなんと30人ほどの若者が集まっていた。

最初は普通に、次は好きなポーズで、などと注文を付けられて撮影開始。 若者たちはテンション高く撮影のたびに大騒ぎする、カメラマンのぼくはみんなから「ヒュー、ヒュー」言われ人気者になってしまった。

若いお兄さんは学校の先生で、若い連中は学生だった。 なんだか突然人気者になってしまい、面白かった。

レストランは開店直後の21時にも関わらずほぼ予約で満席だったが、なんとか庭のテーブルに滑り込んだ。

お勧めの地元料理のセットとワインをオーダーしたが、量が多くてお腹がいっぱいになってデザートがきつかった。 注文の時に確認したら「セットはそれぞれの量が少ないから大丈夫よ!」と言われて信用してしまったが、いつものように一皿をシェアするほうががいいなと改めて思った。

このレストラン、次々に予約客がやってきて満席だ、予約のない客は断られていたので早くきてラッキーだったなぁ。

ゆっくりと食事してから夜の村をぶらぶらする、時刻は23時過ぎで村の住民たちは家の前に椅子を出してきてお話ししながら夕涼みしている。子供たちは道路を走り回り元気に遊んでいる。 広場ではじいさんたちが世間話に夢中。 平和な風景なのだった。

昼間はゴーストタウンのように静かな村、夜になるとこの人でこの活気、どの村も同じだが、本当にこの国はおもしろい。


・・・・・・・・ to be continued


 



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